本研究は、日本の地方公共団体における自己統制法制(行政不服審査、監査委員等による監査)の現状と課題について東アジア諸国の制度及び運用と比較して明らかにし、総合的な自己統制法制の確立を図ろうとするものである。 計画期間最終年次の平成29年度は、住民訴訟制度の改革に関わる地方自治法改正も進められたことから、改正法の内容も踏まえて、監査委員の制度及び住民訴訟・住民監査請求制度の運用の在り方に関するさまざまな問題について考察を進めた。これらの考察結果を踏まえ、研究代表者の田中孝男は、監査委員の監査を中心とした自己統制法制に係る論文や、改正住民監査請求・改正住民訴訟の諸問題をまとめた単行書を2冊刊行するなど、研究最終年度にふさわしい研究のまとめをした。 また、前年度(平成28年12月2日)に行った韓国地方自治法学会と共催の地方自治法シンポジウムで発表された韓国における地方自治団体の自己統制関連の法的仕組みについて、国・地方の関係、韓国条例制定権に対する統制、内部統制を中心とした韓国地方自治団体の自己統制の体系等に関する論稿3編を日本語訳して公表することで、同国の自己統制法制の現状を明らかにすることができた。 研究分担者・木佐茂男も、引き続き、福岡県行政不服審査会の委員(会長)としての実際の案件を踏まえた、あるべき地方公共団体の行政不服審査事務の考究につとめた。また、合併しなかった小規模自治体における行政運営に関するシンポジウムの記録をまとめ、小規模自治体における自己統制の現状と課題を明らかにした。
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