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2015 年度 実施状況報告書

国際貿易紛争処理制度の手続法的発展

研究課題

研究課題/領域番号 15K03142
研究機関学習院大学

研究代表者

阿部 克則  学習院大学, 法学部, 教授 (20312928)

研究分担者 関根 豪政  名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 講師 (60736510)
小寺 智史  西南学院大学, 法学部, 准教授 (80581743)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード世界貿易機関(WTO) / 自由貿易協定(FTA) / 環太平洋パートナーシップ(TPP) / 特別かつ異なる待遇(S&D / 妥当な期間(RPT) / 紛争解決手続の公開 / 先決的抗弁 / 正当性/正統性
研究実績の概要

平成27年度では、研究実施計画に沿って、基本的には3名の構成者が、個別研究を行った。
研究代表者・阿部は、WTO履行パネルの付託事項に関する先決的抗弁を分析した。これまでに蓄積してきた先例を検討した結果、原パネル手続と履行パネル手続の関係や、履行措置と申し立てられた措置との関係の観点から、履行パネルの付託事項に関する先決的抗弁が認容されるか否かの基準が一定程度明確になってきていることが明らかになった。また、WTOの対抗措置仲裁の新たな判断が発出されたため、特に利益の無効化又は侵害の算定方法について分析を加えた。
研究分担者・小寺は、S&D規定の解釈を含むRPT仲裁決定の法理について、近年の実行を踏まえて検討を加えた。その結果、DSU上、規定が不明確な点について、実行を通じた手続的発展がみられることが明らかとなった。さらに、WTOとその他の紛争処理制度を比較・評価するための基準として「正当性/正統性」概念に関する予備的考察を行った。特に、WTOにおける議論に加えて、国際法上の一方的行為、「違法だが正当」論、国際刑事裁判所の制度的評価、法理学上の議論などを検討した。
研究分担者・関根は、WTOを初めとする国家間貿易紛争の手続の公開の問題について分析を行った。具体的には、WTOにおける紛争解決手続に関する判例法的発展の過程、根拠となる理論的背景を考察した上で、FTAにおける動向と対比的に検討を加えた。その結果、WTOの司法的な判断を取り巻く不透明性に対して、FTAレベルで立法的な対応が部分的に見られることが確認され、手続の公開が一般化・発展する傾向が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

阿部が取り組んだ履行パネルの付託事項問題に関しては、基礎的な分析は終了し、平成28年度には研究成果を公表できる予定である。また当初の研究実施計画には含めていなかった対抗措置仲裁における無効化又は侵害の算定方法について、分析が進み、こちらも平成28年度中に成果の一部を公表予定である。
小寺が取り組んだRPT仲裁決定に関しては順調に検討を進んでおり、その成果の一部については平成28年度中の公表を予定している。また、「正当性/正統性」概念の考察についても、WTOにおける議論に加えて、国際法一般及び他の領域における文献の狩猟・分析が進んでおり、概ね順調に推移している。
平成27年度に関根が取り組んだ研究は、研究会における研究報告と、それを踏まえた論文という形で結実させることができた(脱稿済みで、平成28年度中には公表予定)。そこで、WTO紛争解決手続の手続法的発展に関する各論の次なるテーマとして、第三国参加の問題を取り上げ、総論的分析につなげていく予定であるが、ここまで順調に研究が進められている。
以上のように、全体として初年度の研究はおおむね順調に進展した。

今後の研究の推進方策

阿部の研究としては、対抗措置仲裁の分析と関連して、立証責任と専門家の役割について検討する予定である。これは対抗措置仲裁だけでなく、WTO紛争解決手続に共通する問題であり、さらに国際法上の紛争解決手続一般にも通底する問題でもあるので、国際法全般を視野に入れつつ、分析を進める。
小寺の研究としては、今後はRPT仲裁決定の法理に関する研究成果の公表と同時に、「正当性/正統性」概念の一層の精緻化を目指す。さらに、精緻化された「正当性/正統性」概念に基づき、RPT決定における手続的発展の評価を行う。また、RPT仲裁の分析と並行して、WTO紛争処理手続への第三者参加などを具体的に分析し、「正当性/正統性」概念に依拠して評価を行う。
関根の研究としては、今後は、第三国参加の問題について取り上げる予定である。この論点と、手続公開の問題からは、紛争解決機関の権能問題、「正当性/正統性」の問題、発展途上国と第三国参加の問題について更なる議論の必要性を発見したため、これらについても再度検討を加える。これらの問題は、共同研究者の研究関心とも重複するため、今年度は、よりいっそう相互に連動した研究に取り組みたい。
以上のような研究者ごとの個別研究を進めつつ、平成28年度は、研究成果の有機的連関を目指して、意見交換や研究成果の共有をより積極的に行う。

次年度使用額が生じた理由

阿部は、699円のみ残り、書籍等の購入には不足するため、次年度使用額とした。
小寺は9,870円残ったが、研究上必要な書籍の購入金額に足りなかったため、次年度使用額とした。
関根は27,184円残ったが、初年度において研究上必要な書籍はおおむね揃ったため、より新しい書籍の購入のために、次年度使用額とした。

次年度使用額の使用計画

阿部・小寺・関根は、ともに、上記の残額を平成28年度交付金と合わせて、書籍等の購入に使用する。

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公開日: 2017-01-06  

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