研究課題/領域番号 |
15K03158
|
研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
道幸 哲也 放送大学, 教養学部, 客員教授 (10001827)
|
研究分担者 |
戸谷 義治 琉球大学, 法文学部, 准教授 (10643281)
所 浩代 福岡大学, 法学部, 准教授 (40580006)
島田 陽一 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80162684)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 団交権 / 集団的労使関係 / 非正規差別 / 協約自治 / 労働組合 / 就業規則 |
研究実績の概要 |
本研究は、個別的労働条件の集団的性格を踏まえた職場のルール決定プロセスを考察するものである。集団性のある個別的労働条件とは、定年再雇用における条件設定のような、個別的労働条件の側面と集団的労働条件の側面を同時に有するものをさす。このような労働条件の決定過程の適否を考える際には、労働契約法理、就業規則法理、労働組合法理を含んだ複合的な研究が必要となる。そこで本年度は、労働条件の決定過程における労使コミュニケーションに焦点をあてて調査した。以下、代表者の成果のみ要約する。 現在の労使コミュニケーションシステムの中で、最も普及・円熟しているものは団体交渉制度である。しかし非正規労働者が増加し、企業内組合の組織率が低下し、企業外労組による団交が増加した今日の状況を直視すると、団交法理は、職場の様々な利害調整や将来に渡る円滑な労使関係の育成支援という観点を含めて、より深化しなければならない。団交促進機能という視点から現行法理を精査すると、裁判所による救済には限界がある。その点、公労使3者構成の労働委員会は、労使それぞれの立場と職場全体の利益を視野に入れて(非正組合員や別組合員への配慮を含む)団交の障害部分を抽出し、障害の除去にむけて柔軟に労使関係回復の支援を行う。不当労働行為審査過程における和解勧試や労調法によるあっせんプロセスは、使用者に対して団交権の理解を促す教育的機能を有すると共に、組合に対して団交の進め方や内部意見集約の適正さ等について再確認を求める場でもある。今後は、労働委員会の教育的役割の重視した不当労働行為審査制度の再設計が必要となろう。 なお団交権の促進には、労働者個人の交渉力強化も欠かせない。ワークルール教育は、この点を支援するものであり、長期的には労使自治の充実にも寄与する。権利教育の充実に向けた法整備が求められている。
|