本研究では、東南アジア5ヵ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)において、所得格差が政治的安定に与える影響について、定性的、定量的に検証した。これによって明らかになったのは、民主主義体制(インドネシア、フィリピン、タイ)においては、所得格差の拡大を逆手にとって低所得者層の支持を積極的に取り付け、政治権力を確保しようとする新しいタイプの政治家が登場し、権威主義体制(マレーシア、シンガポール)において、安定的な権力保持のために格差拡大を抑えこもうとする動きが見られた。しかし、いずれの場合も政治制度への不信を生み、政治の不安定化につながっている。
|