2019年度は、本研究事業の最終年度であった。よって、2019年度においては、主に研究成果のとりまとめと研究成果の公表を行った。 2019年度における第一の研究実績は、2019年11月18日に、立命館大学人文科学研究所の「グローバル化のなかのアジア」研究会で、「アジアの冷戦と日本-60年代の日本・ビルマ関係を中心に―」と題する研究報告を行ったことである。その研究報告は、ベトナム戦争下、佐藤栄作政権期の日本が、(ア)第1回東南アジア開発閣僚会議への参加をビルマに熱心に求めたものの、中立主義を固守するビルマの同意は得られなかったこと、そして(イ)佐藤政権が、「ビルマ工業化四プロジェクト」の促進のために、新たにビルマに対する円借款に踏み切ったこと、を明らかにするものであった。この研究会では、参加者から、ビルマの内政やビルマの経済状態に関する貴重なコメントを頂戴することができた。この研究会は、本研究のとりまとめにおいて、大変有意義なものであった。 また、2020年3月には、『立命館法学』第387・388号に、「佐藤政権期における対ビルマ経済協力―対ビルマ円借款の起点-」と題する論文を寄稿した。これは、ビルマが「ビルマ工業化四プロジェクト」のための新たな支援を日本に求めてきてから、1968年の三木武夫外相とビルマのティハン外相の会談で円借款交渉が妥結するまでのプロセスを解明したものである。主に、筆者が外務省への情報公開請求で独自に入手した新史料を活用した論文であり、日本とビルマの対立と妥協のプロセスを明らかにすることができた。また、日本がビルマに対する円借款に応じた理由として、①「経済大国」にふさわしい国際的役割を果たそうとしたこと、②ベトナム戦争下、日本がビルマに対する中国の影響力拡大を懸念すると同時に、ビルマの中立維持を重視していたこと、などを指摘した。
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