研究課題/領域番号 |
15K03391
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大久保 正勝 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30334600)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経済統計学 / 計量経済学 / モデル不確実性 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従い、先行研究において示された極度に高い相対的危険回避係数とモデル不確実性回避度の関係を再検討した。本研究では、2つの段階に分けて検討を行った。第1段階は、先行研究の分析手順の精緻化と簡素化である。まず、資産市場データと整合的な危険回避係数をHansen-Jagannathan変動境界(以下、HJ変動境界)をもとに決定する際に、従来の視覚的な判断方法ではなく、(1)HJ変動境界の下限を少なくとも超える、(2)HJ変動境界上または内側に入る、という制約条件を明示的に導入し、危険回避係数の値を正確に求める方法を検討した。次に、求めた危険回避係数の値に対応するモデル不確実性回避度を計算する方法を検討した。先行研究では、シミュレーションにより発見誤差確率(detection error probability)を計算する方法が提案されている。本研究では、発見誤差確率を解析的に導出する方法を導入し、手続きの簡素化を行った。以上の方法を利用して、米国のデータをもとに先行研究の結果の再検証を行った。本研究の方法のメリットは、計算時間の短縮に加え、標準的なソフトウェアの組込み関数を用いて、発見誤差確率の正確な値を求めることができる点にある。第2段階は、米国のデータに基づく結果が、他の先進国においても成立するかを検証することである。本年度は既存の研究で広く用いられている国際データ(ヨーロッパ諸国および日本を含む先進11カ国の4半期データと24カ国の年次データ)を利用した。第1段階と同じ分析手法を適用した結果、モデル不確実性回避度に先進諸国間でばらつきが存在することが明らかとなった。先行研究では、米国のデータのみを用いてモデル不確実性回避の研究が進められている。本研究の結果は、米国の結果の特殊性を判断する1つの指針となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析手順の精緻化と簡素化は、研究計画において予定していた初年度の検討分を完了した。また、データを用いた分析は、24カ国の年次データも対象とした。これは、当初予定していなかった追加的な分析である。以上より、全体として当初の予定通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、モデル設定を変更した場合に、本研究で提案した分析手法がどの程度まで適用可能かを検討する予定である。また、初年度の研究結果から、不確実性回避度の国ごとの違いが明らかとなったが、これがどういう意味を持つかを検討する必要がある。そのための1つの方法として、モデル不確実性の厚生費用の比較を追加で行うことを考えている。以上も含め、他の研究者の意見を聞きながら、今後も研究を進めていく予定である。
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