短期的には貿易自由化の効果は既存の輸出製品の増大という形を取り,新たな輸出品の増大には時間が必要であるという結果は,貿易自由化交渉を行う対象国ごとに産業の変化を予測できる可能性を示している。例えば相手国の貿易構造が補完的である場合,貿易増大効果は大きくなると予測できる。一方,短期的であっても比較優位構造の変化を伴う場合には新たな輸出品の増大による貿易増大効果が認められる。これは日本の貿易構造変化を同時に考慮した貿易自由化政策の立案の必要性を示している。日本の貿易構造がより資本集約財に集中している場合,貿易相手国が代替的な製品輸出国(競合国)であっても貿易の利益をお互いに得る可能性が高い。
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