研究課題/領域番号 |
15K03527
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
西垣 泰幸 龍谷大学, 経済学部, 教授 (20180599)
|
研究分担者 |
牧 大樹 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (60423737)
西本 秀樹 龍谷大学, 経済学部, 教授 (70164605)
加藤 秀弥 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (80434629)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ヤードスティック競争モデル / プリンシパル、エージェント関係 / Voice & Exit モデル / 投票行動モデル / 地方公共財 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、投票行動とVoice & Exit行動を導入したヤードスティック競争モデルの構築と既存のモデルとの比較分析及びそれをもとにしたヤードスティック競争の計量経済学モデルの構築と予備的実証分析を行った。 ①まず、投票行動を導入し、住民参加や投票率を明示的に取り扱う地方政府間のヤードスティック競争モデルの構築については、西垣と加藤が27年度に行った展開型ヤードスティック競争モデルにExit行動を明示的に導入したモデルを用いた、Exit行動の影響分析を進めるとともに、本研究グループが長年発展・進化させてきたトーナメント型ヤードスティックモデルに住民のExit行動を明示的に導入したモデルを構築しそれを用いた分析も同時並行的に開始した。 ②Voice & Exitモデルを応用した地方政府間のヤードスティック競争に関する実証分析については、西垣と牧が連携しながら、理論的・定性的に得られたいくつかの研究成果、特に、潜在的な退出可能性が政策形成に与える効果などを中心にしながら、地方レベルの投票行動モデルにVoice & Exit行動の影響を踏まえた計量モデルを考案し、予備的な実証分析を進めた。また、この研究には研究協力者の東が合流している。 ③新たな電子政府政策提言に関して、西本は、Wong Meng Sengの連携協力を得ながら、27年度に行ったIPA(Importance=Performance)モデルをもとに、住民参加のための電子政府の役割の評価モデルの構築を進めている ④以上の研究を進めるため、週1回程度のワークショップと、月1回の研究会を開催し、研究の進捗状況をメンバーで共有するとともに、得られた成果を取りまとめ、基礎的・関連的研究を含め、国際会議3回、国内の学会1回、国内シンポジウム2回、および9篇の学術雑誌などにおいて公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要部分は、本グループをはじめ内外の多くの研究者により分析・進化されてきた地方公共財供給のヤードスティック競争モデルに、住民の投票行動やVoice and Exitの行動を明示的に導入し、地方分権下の地方政府間競争に関する新たなモデルを提供し、それを用いてこれまでに蓄積されてきた既存の研究成果を一層発展させることにある。 昨年における成果である展開型のヤードスティック競争モデルに、退出の可能性(Exit)とそれを前提とした交渉(Voice)を明示的に導入した予備的モデルを用いたいくつかの分析を行い、そのモデルを一層発展させるとともに、本研究グループが長年進化・改善させてきたトーナメント型ヤードスティック競争モデルに住民の移動・退出(Exit)の可能性を明示的に導入し、予備的な考察を進めている。これらの研究成果は本年度国際会議や国内の学会において公表する予定である。 このような研究成果に基づく、地方政府間のヤードスティック競争の実証分析の研究に関しては、理論的・定性的な分析結果を踏まえ、政策形成における争点の存在や住民の潜在的退出の可能性が選挙結果に与える影響を含めた実証モデルの構築に取り掛かっている。このような成果も本年度、国内外の学会等において公表してゆく予定である。 新たな電子政府政策モデルの構築に関しては、昨年度の研究成果を著書と学術誌において公表したとともに、そのような成果に基づき住民の参加の観点からの評価モデルの構築を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
①西垣と加藤は、投票行動モデルにVoice & Exit行動を導入し、住民参加や投票率を明示的に取り扱う地方政府間の展開型ヤードスティック競争モデルを完成させ、それを用いた地方公共財・サービス供給の最適性の分析を行う。さらに、地域間外部性や補助金の政策的インプリケーションの研究を推進する。東が研究に協力する。 ②西垣と加藤は、Voice & Exitモデルとトーナメント型ヤードスティック競争モデルの統合化とそれを応用した住民の政策形成プロセスへの参加と退出行動モデルを完成させ、住民の政策形成プロセスへの参加や退出行動がヤードスティック競争の帰結に与える研究を推進し、政策形成への住民参加の経済効果や住民の退出がもたらす帰結に関する研究を進め、政策提案を行う。 ③日本における投票モデルやVoice & Exitモデル、地方政府間のヤードスティック競争に関する実証分析については、理論的・定性的に得られた研究成果をもとにしながら、実証研究を完成させる。Voice & Exitモデルとヤードスティック競争モデルを統合した新しい実証モデルの計量分析を、西垣と牧が連携しながら進めるとともに、適宜、補助者に指示をし、研究補助を得ながら進めてゆく。 ④新たな電子政府政策提言に関して、西本は、海外連携協力者との連携により、電子政府の住民参加に果たす役割に関する分析を完成させ、新たな電子政府評価軸を構築する。 ⑤以上の研究を進めるため、週1回のワークショップ、月1回の研究会を主催し、研究の進捗状況をメンバーで共有するとともに、最終年度にあたり得られた成果を積極的に国内のシンポジウム、学会、国際会議、学術雑誌などに公開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の最終年度にあたる2017年度において、国際会議や国際共同研究において研究成果の積極的な発信を行う予定である。そのため、論文投稿・審査料、掲載料、国際会議参加費、国内外の出張旅費などを確保するため。
|
次年度使用額の使用計画 |
国際会議: The 73rd Annual Congress of International Institute of Public Finance (Confirmed), 10th International Conference of Non-linear Economic Dynamics (Submitted)など、また、日本財政学会などの学会発表を行うための学会参加費、国内外の出張旅費に支出する。また、国内外の学術雑誌に成果を公表するための論文投稿、掲載料などに用いる予定である。
|