研究課題/領域番号 |
15K03794
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾子 富山国際大学, 現代社会学部, 准教授(移行) (20746614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公会計 / 財務報告 / 地方議会 |
研究実績の概要 |
本研究は、住民の代表である地方議会の意思決定に有用な財務報告の在り方につき検討するものである。理論研究ついては、政治家による財務情報活用に関する先行研究、および財務情報・非財務情報を包含する地方自治体の財務報告の在り方につき、企業会計分野を含め内外の先行研究を進めてきた。前者については、既にその成果を2015年度に「地方議会における財務情報活用に関する先行研究と課題」として学会報告している。後者については成果報告には至っていないものの、文献調査は進行中である。事例調査については、最終的に地方議会の意思決定に有用な財務報告モデルを提示することを目的に、国内外の先進事例の調査を進めている。このうち、町田市については同市の課別・事業別行政評価シート活用の地方議会審議への影響につき議事録等を調査分析し、その結果は「地方議会における財務報告活用の重要性 ―町田市議会における課別・事業別行政評価シート活用の事例―」(佐藤2016)として論文にまとめた。さらに、町田市の課別・事業別行政評価シートを集計、分析することにより、財務情報・非財務情報を事業レベルのみならず、よりマクロレベルで階層的に提示することこそ重要であるとの課題を抽出した。そして、よりマクロレベルな情報を含む階層別開示のモデルの一部を作成し「地方自治体の経営分析における事業別評価シートの活用可能性ー町田市の課別・事業別行政評価シートの事例ー」として2016年に学会報告した。町田市以外の事例については、米国ポートランド市の包括年次報告書の媒体調査を進めているほか、日本会計研究学会特別委員会が実施した全国自治体を対象とした新公会計制度に係る実態調査及び総務省調査で独自の取り組みを実施していることが明らかになった富岡市、荒川区、美濃加茂市等の基礎調査(財務報告媒体の状況および議会での活用状況)を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地方議会の意思決定に有用な財務報告モデルの開発に関する理論研究に関して、政治家の財務報告利用に関する国内外の先行研究は予定通り進捗している。ただし、地方議会の意思決定に目的適合的な情報を抽出するという観点にたった、民間企業の統合財務報告における情報集約機能の政府会計への応用可能性の研究についてはまだ途上であり、継続的に調査することとする。 事例研究については、町田市の事例研究は議事録分析、財務・非財務情報の分析による課題の抽出まで進行した。そして、財務・非財務情報の階層別開示の有用性を検証するための財務報告のモデルの一部を作成したが、同モデルの活用可能性に対する議会へのヒアリング調査に遅れが生じている。この遅れは2017年度に解消する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は研究最終年度であることから、理論研究については、既に終了している政治家の財務報告利用に関する国内外の先行研究レビューに加え、地方自治体における財務・非財務情報の統合的な開示につき、民間企業の統合財務報告における情報集約機能にかかわる理論の政府会計への応用可能性につきまとめる。 事例研究については、全国の地方自治体を対象とした新公会計制度に係る実態調査及び総務省調査をもとに抽出した地方自治体の先進事例、とりわけ政策・施策別開示の在り方につき研究する。そして、これらの先進事例研究から得た知見と、これまで取り組んできた町田市の財務・非財務情報の階層別開示データをもとに財務報告のモデルを構築し、実際に市議会議員が活用可能であるかアクション・リサーチを通じて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要因は、研究課程において、複数回実施する予定の地方自治体ヒアリング調査の一部が遅れたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のヒアリング調査は2017年度に実施する予定であり、前年度未使用額は2017年度に使用される予定である。
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