研究実績の概要 |
本研究は住民の代表である地方議会の意思決定に有用な財務報告の在り方につき検討するものである。理論研究ついては、政治家による財務情報活用に関する先行研究、および財務情報・非財務情報を包含する財務報告の在り方につき国内外の先行研究を進めてきた。前者についてはその成果を2015年に国際公会計学会第18回全国大会において「地方議会における財務情報活用に関する先行研究と課題」として報告した。そして、後者については「地方自治体における財務報告の重要性」(佐藤2018)において公表している。2017年度は本研究の核となる実態調査を実施した。地方自治体の財務書類の活用に関する大規模な調査は総務省の調査、日本会計研究学会特別委員会の調査などいずれも行政を対象としたものであり、地方議会を対象とした調査は2010年に小林・山本らが実施したアンケート調査などに限られる。そこで本研究では全国の1,788の地方議会議長を対象に2018年2月~3月にアンケート調査を実施し、1,125の回答を得た(回答率62.9%)。この結果からは、①議会においては自治体全体、政策などよりマクロレベルの財務・非財情報ニーズが高いこと、②情報ニーズがあるにもかかわらず財務書類の有用性の認識が非常に低いこと、②財務書類の利用率向上のためには補足説明を含む報告媒体の開発や議員向け研修の拡充など理解可能性の向上が重要であることが明らかになった。この結果については、2018年6月の日本政府会計学会にて報告する予定である。そして、これらの課題を踏まえて参照すべき事例として町田市議会における町田市の課別・事業別行政評価シート活用についても研究を進めた。その成果は「地方議会における財務報告活用の重要性 ―町田市議会における課別・事業別行政評価シート活用の事例―」(佐藤2016)において公表している。
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