研究課題/領域番号 |
15K03854
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
|
研究分担者 |
西田 心平 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (00449547)
堤 圭史郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (70514826)
添田 祥史 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80531087)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 就労支援 / 参加包摂型社会 / 伴走型支援 / 生活構造論 |
研究実績の概要 |
本研究は、若年生活困窮者への社会的就労支援事業が参加包摂型社会の形成に果たす機能について考察することを目的としている。そのため平成27年度には、以下の事業を行った。 (1)研究会を5回開催し、先行研究のレビューと分析枠組みの検討等を行った。研究会での議論を通して、参加包摂型社会の形成には3つの社会関係の形成が重要であることが見えてきた。すなわち、①困窮当事者を「発見」し支援組織(人)につなぐファーストコンタクトの形成(ここでは自治会や学校が重要や役割をはたす)、②多様な支援組織(人)間の相互連携の形成(地域での「受け皿」ネットワーク形成)、③生活困窮当事者を「受け皿」ネットワークにつなぎ、状況に応じてもどしていく持続的なコーディネートの形成である。 (2)このような社会関係の形成を、地域生活の形成・維持の観点から整理したのが都市社会学系の生活構造論であると考え、それを本研究での分析枠組み(理論)と位置づけた。また、生活困窮者支援における参加包摂型社会の形成と生活構造論との関連について論文を執筆した(ただし、掲載書の発行は次年度の予定)。 (3)上記の理論研究と並行して、各地で行われている社会的就労支援事業についての聞き取り調査を行った(北九州、釧路、仙台・石巻、盛岡、大阪、京都)。聞き取りのポイントは、上記①~③の社会関係の状況と、その形成過程である。単に就労訓練や就労準備支援を行うだけではなく、「発見」「受け皿ネットワーク形成」「コーディネート」機能を総合的にもつ支援事業として興味深かったのは、釧路市社会的企業創造協議会、盛岡圏域地域連携ネットワーク会議、NPO法人抱樸(北九州)の取り組みであった。ただし、これらの事業においても、自治会レベルでの「地域」とのつながりはあまり見られなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)研究会での議論を通して「社会的就労支援事業による参加包摂型社会形成」のイメージがある程度確定することができた。 (2)基本的な分析枠組み(理論)として都市社会学系の生活構造論を設定することができた。 (3)当初予定していた地域(福岡県、関西、関東、東北、北海道)での聞き取り調査もおおむね実施することができた。なお、当初の計画では、聞き取り調査の対象を絞り込むためNPO法人ホームレス支援全国ネットワークに参加している団体へのアンケート調査を実施する予定であった。しかし、先行研究のレビューやインターネットによる情報収集によって聞き取り対象となる社会的就労支援事業を選定できたため、調査は実施しなかった。 (4)ただし、次年度実施予定の調査対象地の具体的な絞り込みはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)平成27年度に実施した社会的就労支援事業の聞き取り調査をもとに調査地点を決定し、地域調査を実施する。調査地点は2カ所を考えているが、うち1カ所は、NPO法人抱樸の社会的就労事業所がある北九州市八幡東区を対象とする予定である。調査内容は、①社会的就労支援事業への認知・関心、②地域の生活環境評価、③コミュニティ意識、④地域活動への参加、⑤社会関係等である。調査票の検討・実査・分析は、研究メンバー全員で行う。調査は、郵送法を併用した留め置き法で実施の予定である。 (2)この地域調査を通して得られた地域のコミュニティ状況や生活ニーズの情報をもとに、アクションリサーチの手法を参考にしながら、自治会の役員、NPO職員を交えた検討会を開き、「相互多重型支援ネットワーク」の形成可能性を検討する。ただし、この作業については、地域との頻繁なやりとりが必要となるため、調査対象地域2カ所で行うことが難しいことも想定される。その場合、北九州市八幡東区のみで実施する。 (3)調査地点での社会的就労事業について、①困窮当事者を「発見」し支援組織(人)につなぐネットワーク、②地域での「受け皿」ネットワーク、③生活困窮当事者と「受け皿」ネットワークとのコーディネートについて、さらに聞き取り調査を進める。同時に、事業に参加している若年生活困窮者への聞き取り調査により、地域社会への参加状況等についても把握する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者(1名)が公務のため予定していた調査に同行できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
調査旅費ならびに図書購入費として使用する。
|