研究課題/領域番号 |
15K03919
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
衣笠 一茂 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (50321279)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活困窮者 / 地域生活 / コミュニティ・エンパワメント / 住民参加 / 地域福祉計画 / 地域福祉活動計画 / 地方自治体 / 社会福祉協議会 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、大分県福祉保健部地域福祉推進室・大分県社会福祉協議会地域福祉部との協働のもと、生活困窮者を地域で支えるための「コミュニティ・エンパワメント」の具体的なスキームについての検討を行った。 具体的には、平成27年度において大分県福祉保健部地域福祉推進室と協働で実施した「生活課題実態調査」によって得られたデータを分析、その結果と考察を大分県下18市町村の福祉担当部局を対象として提供し、同時に今後のフィールドとして協力できる自治体を検討した。 その結果、大分県下で唯一地域福祉計画・地域福祉活動計画を策定できていない別府市が候補に挙がり、当該自体の地域福祉担当者と検討の結果、別府市青山地区において小規模集落を対象としたコミュニティ・エンパワメント・スキームを実施し、それを全市に展開してゆくことで合意することが出来た。 その合意を下にして、平成28年12月に別府市青山地区において活動する民生委員・自治委員を対象とした、コミュニティ・エンパワメント・スキームの説明会を行った。地域包括ケアシステムだけでなく、厚生労働省が推進する「わがこと・丸ごと」地域共生社会づくりに向けて、地域住民の参加による生活支援システムの構築の必要性や、いわゆる自助・公助・互助共助が一体となった包括ケアシステムの展開について、深い関心が寄せられ、本研究の目指す「生活困窮者を地域で支えるためのシステム作り」の必要性について、一定の理解を得ることが出来た。 こうした住民の理解を下にして、平成29年度初頭より別府市青山地区において住民懇談会を実施し、本研究の必要性を理解していただいた上で、本地区を対象とした「地域アセスメント」を行い、コミュニティ・エンパワメント・スキームを展開してゆくことにより、「生活困窮者を地域で支えるためのシステム作り」を、住民参加に基づいて展開してゆく研究目的の達成を意図している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は三ヶ年の計画であるが、初年度に全県的な状況を把握し、次年度にそれを踏まえてフィールドサイトを決定した上で、本研究に必要なフィールドワークを行うフィールドサイトを決定するところまで、順調に推移している。しかし、申請者が昨年度より学部長に着任したことにより、どうしても校務に割く時間が長くなってしまい、本研究の進捗に必要な十分なエフォートを確保できなかった状況もある。研究のスキームそのものは順調に推移し、地域住民からの理解や協力も得られているが、今年度ではより具体的なコミュニティ・エンパワメント・スキームを展開してゆく上で、とくに地域アセスメントの作業を円滑かつスピーディーに進めてゆくことが求められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで述べたように、本研究の実施に必要な大分県全県の基礎データと、それに基づくフィールドサイトの設定、またサイトにおける住民や行政からの協力体制も十分に確保できたので、今年度はこの土台に従い、具体的にコミュニティ・エンパワメント・スキームを実践してゆくことが求められると考える。 とくに、「生活課題実態調査」の方法論に基づいた「地域アセスメント」を適切に行う必要がある。これらを具体的に展開していきながら、地域プランニング、またエンパワメント・スキームの実行と、住民の主体性を引き出す促進車としての役割を、県行政や県社協との協働において、申請者自身が展開してゆく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、コミュニティ・エンパワメント・スキームの先進地として神奈川県相模原市、大阪府大阪市、大阪府松原市、福岡県福岡市などを想定したが、記述のように申請者が学部長に着任したことにより、十分に先進地域のフィールドワークを行う機会を確保することが出来なかった。また、物品については可能な限りすでに研究室に備えられているものを使用し、費用の縮減に務めたため、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
先述のようにコミュニティ・エンパワメント・スキームの先進地への精力的なフィールドワークの実施を中心に考えている。近年では北海道釧路市、埼玉県さいたま市などの事例もあり、出来るだけ多くの事例を研究し、本研究の実施に役立てたいと考えている。とくに大阪府社会福祉協議会とは良好な関係を気づいており、全国でも屈指の先進地区である大阪市には、集中的にフィールドワークを行いたい。 また、平成28年度にはいわゆる「わがこと・丸ごと」地域共生社会づくりの施策を受けて、数多くのコミュニティ・エンパワメント・スキーム関連の書籍が出版された。これらの書籍を精読し、申請者の研究のオリジナリティを高めることにも務めていきたい。
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