地域において生活する生活困窮者の抱えるニーズについて、単なる経済的支援だけではなく、地域社会との「関係性」に着目した支援を展開する必要性が明らかになった。 具体的には、自立支援を受けて就労から経済的な自立支援に至ったとしても、仕事への定着や地域社会に定着して生活することは、個人の力だけでは困難なことが多い。調査事例の中には、ホームレス状態から生活困窮者自立支援事業の支援を受け、低価格の賃貸住宅やフードバンクによる食糧支援、また就労への支援を受けたとしても、地域住民との折り合いが悪く、結果としてコミュニティから排除されてしまった事例などが存在する。 こうした調査結果から、生活困窮者の自立支援に向けては、現状の経済的支援に傾斜した援助を提供するだけではなく、住民や社会、コミュニティとの「関係性」に着目した援助が必要である。具体的には、生活困窮者本人に対する自立支援だけではなく、彼や彼女をとりまく「環境」としてのコミュニティや地域住民との関係性を「媒介」してゆくことにより、経済的ニーズのみならず社会関係上のニーズを充足していくことが重要となることが析出された。
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