近代日本の精神病者政策における「保護」と「公安」の二面性は、法の改廃過程にも、法の運用過程にも、時に人権侵害・剥奪の認識としても、いずれかの価値が強調されながら歴史的に繰り返し立ち現れていた。第二次世界大戦までの精神病者政策上の課題は、精神病者の「保護と公安」「治療と収容」「発病予防と出生制限」「優生および断種」へと、戦争に向かう社会情勢の中で質を変化させ、「公安」に傾斜していった。戦後の法改廃過程にも、法の運用過程にも、精神病者が関連する事件報道にも、いずれかが強調されながら二面性議論は歴史的に繰り返し現れる。社会圧力を強く受け公安に傾くことが、精神病者政策史を構成する典型である。
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