研究課題/領域番号 |
15K03934
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
村社 卓 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80316124)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 高齢者の孤立予防 / コミュニティカフェ / 機能特性 / 参加要因 / 定性的データ分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢者の孤立予防に関わるボランティアの「共感力」の構造を明らかにすることである。ボランティアは高齢者の「孤立死」問題に現場で直接関与している。活動継続のカギは、共感を抑えることである。しかし、共感の制限は困難であり、その対策が必要となる。具体的な研究項目は次の3点である。①地域で孤立した高齢者に関わるボランティア活動を対象に、定性的(質的)データを収集し、「共感力」の概念を「共感疲労」「共感満足」の観点から整理する。②ボランティア活動の促進・阻害要因について「フロー理論」の視点から定性的データを収集し、定性的コーディングにより解析する。③上記の①②の作業を通して得られた知見について、欧米の先進的な知識との比較検討を行い、超高齢社会に最適な東アジア型ソーシャルワークモデルの基礎資料とする。 上記の研究計画を踏まえ、本年度は②に関連する課題を中心に取り組んだ。研究目的は、高齢者の孤立予防を目的とした「コミュニティカフェ」の機能特性について、実証的、構造的に明らかにすることである。本研究では特に、地域住民の参加要因および参加に伴う変化の視点から検討を行った。研究方法は定性的研究法である。データ収集は4年6か月にわたる参与観察とインタビューにより行った。データ分析には定性的コーディングを用いた。分析の結果、地域住民の参加要因は「おしゃべりを楽しみながらの健康管理」、参加に伴う感情と行動の変化は「関心の広がりと緩やかな関わり」として明らかにされた。以上のことから、高齢者の孤立予防を目的とした「コミュニティカフェ」の特徴は「高齢者ボランティアの活用」「専門職の参加」「コーディネーターによる調整」「送迎・声かけの実施」であり、機能特性は「社会的つながりと健康の維持」「社会資源へのつなぎ」である。この成果は、高齢者ボランティアによる主体的な活動の推進に貢献するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は具体的な研究項目のうち、②の課題に関連するテーマを中心に取り組んだ。具体的には、「地域で孤立した高齢者に関わるボランティア活動」を対象として、定性的(質的)データを収集しその分析を行った。特に、ボランティアの「共感力」を高めるために必要となる条件について、「コミュニティカフェ」の機能特性に着目した。 そして、その成果を、論文「高齢者の孤立予防を目的としたコミュニティカフェの機能特性:地域住民の参加要因および参加に伴う変化の視点からの定性的データ分析」としてまとめ、『社会福祉学』(2018年1月31日締め切り:査読中)に投稿した。 さらに、本研究および次年度以降の研究の準備として、東京都における聞き取り調査を継続実施するととともに、成果の国際比較のため、韓国における独居高齢者対策に関する聞き取り調査を3回(2017年6月、9月、2018年3月)、韓国のソウル市および大邱市における総合老人福祉会館、敬老堂を中心に実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、論文「高齢者の孤立予防に関わるコミュニティカフェの支援関係」を発表する予定である。この論文では「カフェ」における「支援関係」に注目する。2018年2月に発行された前論文では、特にボランティアを「カフェ」から分離しており、「カフェ」における「支援関係」については十分に注目していない。本論文では、「ミーティング」「振り返りの会」等に着目し、それを明らかにする予定である。 また、「快適な感情に対する共感の構造に関する研究」についても、その準備作業を開始する予定である。モノやお金の価値が最小化する社会においては、「誰にどれだけ支持、共感されているか?」が大切になる。特に、ボランティア参加者による「素朴でポジティブな感情」は重要であり、ボランティア活動における「快適な感情」に対しての支持と共感に着目するものである。 さらに、最終年度も、東京都および東アジア地域(韓国、中国)において、高齢者の孤立予防に関する聞き取り調査を継続して実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度も、特に予定してた「人件費・謝金」が調査協力者の好意により、また効率の良いデータ分析作業により、不要となったため 、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、計画どおり、「人件費・謝金」を支払う予定である。
|