本研究の目的は,高齢者の孤立予防に関わるボランティアの共感力の構造を明らかにすることである.特に,ボランティアの共感力について,高齢者の孤立予防を目的としたコミュニティカフェ(以下「カフェ」と省略する)に参加するボランティアの継続要因の視点から明らかにした.高齢者の孤立予防に関わるボランティアは,どのような要因、感情、行動から「カフェ」に継続的に参加するのか.ボランティアの共感力に焦点を当てた.上記の結果を踏まえて,ボランティアの共感力について,日韓の比較検討を行った. 学術的な特色は,地域で孤立しがちな高齢者に直接関わるボランティア活動を対象とした定性的調査を通して得られたデータを基礎に,ボランティアの共感力の構造化と定義化を試みた点である.ボランティアは孤立死問題等に直接関与している.活動継続のカギは過度の共感を抑えることである.しかし,共感の制限は困難であり対策が必要となる. 独創的な点は,①高齢者の孤立死問題についてボランティアの共感力から検討したこと,②高齢者の孤立予防に関わるボランティアの共感力について日韓の比較検討を行ったことである.後者は,韓国でのボランティア活動との比較検討により,ボランティアの共感力に関して,新しい知見を得ることができた. 韓国では老人福祉館や敬老堂の活動が,高齢者の孤立予防を目的としたわが国の「カフェ」に類似している.敬老堂の主な機能は,地域高齢者への福祉サービスの提供であり,運営主体は高齢のボランティアである.韓国でも核家族化の進行,家庭内での若い世代との会話の減少,高齢者の役割の減少等により,敬老堂の機能が再び注目されている. 以上の作業を通して,高齢者の孤立予防的な対策について,ボランティアの共感力の視点からの知見を提示することができた.それは超高齢社会に最適な「東アジア型ソーシャルワークモデル」の基礎資料となるものである.
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