研究課題/領域番号 |
15K03983
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山田 裕子 同志社大学, 社会学部, 教授 (80278457)
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研究分担者 |
武地 一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10314197)
杉原 百合子 同志社女子大学, 看護学部, 准教授 (90555179)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 初期認知症 / MCI / 家族介護者 / BPSD / 治療的環境 / 認知症カフェ / 語り / 相互交流 |
研究実績の概要 |
2017年度は前年度から引き続き、MCI 及び初期認知症の人とその家族の二者関係についての並行的調査と介入を、認知症の人とその家族介護者6組に組に対して行った。 具体的には、介入とは認知症カフェの参加者に対して、専門職、市民及び学生ボランティアによる治療的環境の提供である。このような治療的環境の中で、認知症の本人は、カフェの客として、自分の経験を語ることを好み、その語りの中で、認知症と診断された事へのとまどいや、やり切れなさなどと共に、主に介護家族である周囲の人たちへの不満、怒り、また感謝なども感情と共に表現する。さらには、生育環境における人間関係や、自身のライフヒストリーも好んで語る。ライフヒストリーは、学業や仕事の達成感や愉快さなども含み、カフェスタッフとの共感を伴う交流が生まれ、多くの場合笑いが起こるのを見る。 一方、家族は、認知症の本人とは離れたところで、カフェスタッフや同じく家族介護者に対して、日常生活における、認知症の進行によるトラブル(モノの紛失、家事の能力を欠く、そしていわゆる「徘徊」などのBPSD)に拠り、驚いたり、困惑、狼狽する経験を、報告する。語りつくし留飲を下げた後には、仲間やスタッフから、共感、本人への対応への戒め、教示、助言などを受けて、自分の行動への反省や後悔を含む学びがなされ、自分の一言、行動などへの自己評価がなされる。このようなカフェスタッフと仲間の介護者に語りつくすことと、それに対するフィードバックを受けることにより、家族の認知症の本人に対する行動には、変容が起こるようであり、それが、認知症の本人の感情とBPSDに作用していることを、家族が気付くようになることが見られた。 それらを、時系列的に記述し、また家族介護者からの聞き取りを質的分析することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究分担者2名が遠方かつ新編成の教育・研究機関に異動し、新任地での教育任務に多大の時間と責務を負い、研究の時間を捻出できなかった。また、研究協力者の結婚、引っ越し、昨年10月の出産で認知症カフェコーディネーターとしての研究協力が難しかった。研究代表者自身が本務校の大学院教育の責任増加に加えて、研究対象者のフィールドのカフェコーディネーターとして実働を要請され、研究対象者に接する時間は長くなり、観察もかなえられたことは、この研究に利点もあったが、データを分析し概念化し文字化し、研究分担者と協議の上、予定した通り、介入方法を特定し、介入モデルを作成することには時間が足らず、研究が大幅に遅延したため、研究期間を延長を申請して、認められた。 このような事情で、フィールドにおける研究対象者である、初期認知症およびMCIの人とその家族の記録は十分に集めることができたが、研究分担者との協議を経て、介入方法を具体的に特定することが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、研究分担者は引き続き新任地での業務に忙しいとみられるが、メールでのやり取りで、協議の工夫を行い、研究を推進してゆく。 介入方法の特定という目的を達成するためには、現在3方向からの研究データを利用して分析することを考えている。1つは2017年度および今年度に、カフェ内での記録をさらに精査し、介入方法の絞り込みを行うことである。2つ目は介護家族へのインタビュー記録の質的分析を進めており、その内容から、効果のある介入方法が示唆される。3つ目として、カフェでこれまで実施したOJT研修参加者のコメントの質的分析によって、部分的に効果的な介入方法が示唆される。それらを総合して、研究分担者と協議をして、介入方法の特定を可能にしたい。 もう1つの目的である並行的介入で働く介入者の養成には、証拠に基づき、介入の理念と実際の方法を具体化することが必要であるが、上記の3方向からの研究結果を総合的に考え合わせて、理念と具体的なプログラムを開発する。そのようにして、介入者の養成方法を組み立てることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者2名が遠方かつ新編成の教育・研究機関に異動し、新任地での教育任務に多大の時間と責務を負い、研究の時間を捻出できなかった。また、研究協力者の結婚、引っ越し、昨年10月の出産で認知症カフェコーディネーターとしての研究協力が難しかった。研究代表者自身が本務校の大学院教育の責任増加に加えて、研究対象者のフィールドのカフェコーディネーターとして実働を要請され、研究対象者に接する時間は長くなり、観察もかなえられたことは、この研究に利点もあったが、データを分析し概念化し文字し、研究分担者と協議の上、研究発表をするには時間が足らず、研究が大幅に遅延したため、研究期間を延長を申請して、認められた。 今年度も、研究分担者は引き続き新任地での業務に忙しく、研究代表者自身も多忙であるが、データ収集は進んでおり、分析にはメールでのやり取りで、協議の工夫を行い、研究を進め、当初の目的を遂行していく。 研究補助者への謝金、研究資料収集と研究発表のための学会参加、研究分析のための文具と補助具購入などに使用する予定である。
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