研究課題/領域番号 |
15K04074
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠矢 浩一 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (50242467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障がい / 同胞 / 関係性 / 認知 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、健常同胞を有する成人と、障がい同胞を有する成人への調査面接を通して、若齢介護者の視点からきょうだい関係認知に関する検討を行った。まず、定型発達児を同胞にもつ対象者の語りを分析し、KJ法を参考に「同胞をモデルとしての自分の成長」、「受容的態度」、「同胞の印象の肯定的変化」など、41の小分類を抽出した。次にそれらの分類を「自分の成長」、「自分と同胞の違いに対する感情」、「同胞の性質への言及」等の19に中分類化した。最終的にこれらを「同胞との関係性」、「同胞から自分への感情」、「自分から同胞への感情」、「自分と同胞の比較」、「同胞の自分に対する印象」等の10の大分類に整理した。次に、障がい児を同胞に持つ対象者の語りを分類した。その結果、219の語りが抽出され、「特別な経験」、「同胞の将来の心配」、「家庭の外での同胞の様子」等の63の小分類が見いだされた。これらは、さらに、「同胞の存在の自分への影響」、「同胞への心配、悩み」、「同胞の成長についての実感」といった27の中分類として整理された。さらに、これらは、「同胞との関係性」、「同胞から自分への感情」、「自分から同胞への感情」、「自分と同胞の比較」といった11の大分類として整理された。これらのカテゴリーを比較した結果、定型発達児のきょうだいは、自分と同胞の二者関係の中できょうだい関係を認知するのに対し、障がい児のきょうだいは、同胞以外の他者を含めてきょうだい関係を認知することが特徴的であった。また、定型発達児のきょうだいは、自己の将来について同胞とは切り離して意識するのに対し、障がい児のきょうだいは、自己の将来に関わる存在として同胞を意識していることが明らかとなった。若齢介護者のケアを考える際、同胞に対してどのような視点から関わりを保ち、将来を想像しているのかについての関係性の視点が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若齢介護者の典型例としての、障がい児のきょうだい児の認知的特性について、インタビュー調査を通した検討を通して、実態として明らかにできている点で、基礎的なデータを収集できていると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
若齢介護者については、幼少期からの家族ケアの経験によって青年期の社会的志向性に影響を及ぼされることが想定され、また、児童福祉施設等の入所児童においても同胞の障がいの有無にかかわらず様々な心理的影響がもたらされている可能性がある。今後は、そうした人々を対象とした詳細な検討を進める予定である。
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