研究課題/領域番号 |
15K04074
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠矢 浩一 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50242467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障害 / 疾患 / 同胞 / きょうだい |
研究実績の概要 |
本年度は,障がいを有する同胞をもつ成人における対人関係の変容過程について面接調査を実施した。本人の了解を得た,障害をもつ同胞とともに暮らしている(または,暮らしていた)成人以上のきょうだいを対象に,半構造化面接を実施した。家族や障害をもつ同胞との生活の中での体験の捉えについてステップコーディング(SCAT)の手法を用い構成概念を抽出,概念関連図を作成した。分析の結果,きょうだい児としての成長のプロセスでは主に①周囲からの視線に対する意識,②家族の外での人間関係の重要性,③将来への不安の3つの因子が抽出された。同胞に対する視線に対してきょうだい自身が否定的に見られたように感じることが周囲から隠れるなどの振る舞いを規定する可能性,きょうだい自身が家庭内役割としての保護者役割から縛られずに過ごすことができる時間の確保が必要であること,今後,同胞のケアを担う人が親ではなくなるというプロセスはきょうだいのライフコース選択のプロセスにおいて等至点として経験されること,が示された。 こうした面接調査研究に平行して,何らかの心身の障害や疾患を有する家族成員と生活をともにした経験のある成人へのインターネット調査を実施した。身体障害,精神障害,知的障害などの障害の種類,および,児童期までの心理的健康状況,さらに,母親との関係のあり方についての調査を実施した。調査結果は現在分析中であり,今後,同一の質問項目を翻訳の上,国外におけるきょうだい児の認識との対比の中から,我が国特有の文化における障害家族に対する心理学的支援のあり方について検討を深める予定である。29年度調査結果については,30-31年度に開催される心理学関係諸学会において報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
要介護家族を有する家庭で育つ子どもたちの成長過程およびその体験について,インタビュー調査,質問紙調査を通じてほぼ順調に研究が進行中である。特に,長期にわたって障害を有する家族と生活を共にし,様々な経験を重ねてきた成人期のきょうだい者に対するインタビューを実施できたこと,また,同様に成人期以降の研究協力者に対して,幅広い視点から介護等を必要とする家族と生活することの意義を追求できている点で,おおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した,同一の質問項目を翻訳の上,国外におけるきょうだい児の認識との対比の中から,我が国特有の文化における障害家族に対する心理学的支援のあり方について検討を深める予定である。また,この研究実施おいては,欧米圏,アジア圏といった世界各地に見られる宗教的・文化的背景が,「きょうだい」としての要介護家族の支援への貢献度に影響を及ぼしている可能性が推察され,そうした文化的観点について焦点を当てた研究を推進する予定である。
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