研究課題/領域番号 |
15K04088
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
藤崎 眞知代 明治学院大学, 心理学部, 教授 (90156852)
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研究分担者 |
杉本 真理子 帝京大学, 教育学部, 教授 (70130010)
石井 富美子 立正大学, 社会福祉学部, 名誉教授 (00060682)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生涯的縦断研究 / 語り / 自己決定体験 / 転機 / 意味づけ / ライフストーリー |
研究実績の概要 |
・研究の目的、研究の方法、具体的な研究内容をメンバー間で確認し、3年間の具体的な研究スケジュールを作成するとともに、日本質的心理学会に参加し、分析方法に関する情報・及び文献に関する情報を得た。また、日本発達心理学会第27回大会(平成28年5月1日 北海道大学)においてポスター発表行った。 ・第1世代、第2世代協力者の過去の自伝的手記や語りの資料を整理するとともに、先行研究の調査および必要文献・図書を選定し輪読した。 ・1年目に位置付けた第1世代(母親世代)協力者と第2世代(子ども世代)協力者に対する個別ナラティブ面接、および第1世代と第2世代合同ナラティブ面接を実施した。また、生涯的縦断研究本体の月例研究会を研究協力者とともに継続的に行ったほか、第2世代協力者と研究スタッフとの合同ミーティングを2回(平成27年6月、平成28年2月)行った。さらに平成27年8月には、第2世代協力者と研究スタッフとで旧中里村を再訪し、子ども時代における中里キャンプ生活を現時点(50歳時)から振り返り、ノンプログラムでの生活体験の意味づけを行った。 ・上記の新たな資料収集と平行して、分析枠に関して質的分析方法としてのTEM、ライフストーリー分析等の文献研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の具体的研究計画を概ね順調に実施できたとする理由は、以下の通りである。 ・研究の方法に関して、質的心理学会への参加、および研究月例会において分析方法を検討するにあたり、研究協力者と研究者との関係性(見る・見られる関係)を鋭く捉えた映像「キッチンストーリー」、死から生の在り方や幸せ観を問うた映像「ワンダフルライフ」、親子関係の本質を取り上げた「そして父になる」等を視聴し、生涯的縦断研究の意味を検討できた。また、文献としては『日本社会に生きるということ』『自分のなかに歴史をよむ』(阿部謹也、2003;2007)、『ライフストーリー分析-質的調査入門』(大久保孝治、2008)、『ナラティブ・時間・コミュニケーション』(野村直樹、2010)、『対話的自己;デカルト/ジェームス/ケンペン』(ハーマーとケッペン、2006)等を読み、自分史を捉える枠組みをさらに吟味することができた。 ・上記の検討を通して、第1世代・第2世代合同面接の具体的な手続きとして可能な場合は複数回のナラティブ面接を行い、研究協力者と研究者の関係性が深まることにより質の高い語り、すなわち他者に開かれ、対話する関係としての独自のコミュニティーを形成していることが明らかとなり、日本発達心理学会において、その成果を示すことができた。 ・第2世代協力者との合同ミーティングを2回(平成27年6月、平成28年2月)行った。さらに平成27年8月には、旧中里村に第2世代協力者と研究スタッフとで再訪し、当時のノンプログラムのキャンプ生活を振り返り、継続したキャンプに参加することで体験したことが、50歳となる現在の生き方、仕事観、価値観、及び家族関係との繋がりについて話し合い、子どもキャンプの生活を通して学んだものの意味、その人生への影響性について旧中里の自然のなかで吟味できた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に位置づけた第1・第2・第3世代ナラティブ面接、世代間合同ナラティブ面接を実施する。米国、中国に在住する第2世代協力者のナラティブ面接、第2世代の創設家族との交流を実施する。これらのナラティブ面接は、随時逐語記録を作成した上で、編集版ライフストーリーを作成し、質的検討を進める。と同時に、さらに精緻な質的分析手続としていくために、関連学会等へ参加し、最新の情報、及び文献情報を得るようにする。 旧中里村、及び東京において第2世代協力者と研究スタッフとの合同ミーティングを実施し、それぞれがこの1年間の体験を振り返り、子ども時代の中里キャンプにおける自己決定体験等の意味づけの変容、及び第3世代やさらに広く次世代への関係性の在り方や価値観等の世代間伝達の様相を捉える。 上記の資料収集・分析に基づく研究成果を日本発達心理学会第28回大会、及び関連学会において発表するほか、大学等の研究紀要に論文を投稿していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本発達心理学会大会は例年は年度末の3月に開催されてきたが、第27回大会については北海道大学で開催されることとなり、会期が2016年4月29日~5月1日となったため、平成27年度予算では執行できず残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定している海外に在住する研究協力者とのナラティブ面接と創設家族との交流調査をより充実させるために残金を使用する。
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