研究課題/領域番号 |
15K04166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
臨床心理学
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
富樫 公一 甲南大学, 文学部, 教授 (90441568)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トラウマ / 倫理的転回 / 精神分析 / 不条理 / 不確かさ / 災害 |
研究成果の概要 |
本研究は、社会的トラウマのサバイバーが不条理体験を人生に組み込むプロセスを理解することを目的とした。サバイバーの語りの分析から次のことが明らかになった。(1)サバイバーは社会の責任ある構成員として、他者やコミュニティのために何かをしたいと感じることがある、(2)それによって彼らは、場所(土地)や時間(歴史)、社会(コミュニティ)に組織された間主観的領域に自分を見出すことができる、(3)彼らはしばしば人間としての根源的孤独(homelessness)を感じている。精神分析的治療では、患者と治療者が根源的孤独感を共有することは、相互的癒しの対話のフィールドを生み出すという点で重要だと考えられる。
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自由記述の分野 |
精神分析、臨床心理学
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
社会的トラウマの体験者が社会的活動に力を注ぐことは、精神分析では「抵抗」や「行動化」、「エナクトメント」として扱われやすい。本調査は、トラウマ体験の後に人々が社会やコミュニティへの責任感を自覚し、それに基づいて活動をすることは人の歴史そのものであることを明らかにした。トラウマ体験を持った患者の精神分析的心理療法では、治療者は、人の活動に含まれるトラウマの側面をよく理解して進めていく必要がある。患者・クライエントだけでなく、治療者もまたトラウマの中に生きている。本研究は、患者・クライエントと治療者がトラウマや社会貢献への想いを共有することは、治療的創造性の領域でもあることを治療者に教える。
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