研究実績の概要 |
本研究は、日英バイリンガルの語彙表象に関して、特に表記の情報の処理に焦点を当てて研究を行うものである。研究2年度目は、バイリンガルの母語である日本語における文字表象の抽象化について行った研究成果が国際誌に掲載された。一般的に、日本語のひらがな/カタカナは、英語における小文字/大文字との対応に類似していると思われていたが、実験の結果、日本語におけるひらがな/カタカナの文字は抽象化された表象を持たないことが示唆された。これにより、もしバイリンガルが(英語母国語話者と同様に)英語文字を抽象化して表象していた場合、それは第二言語の単語(L2語)の文字表象が母国語の形態表象/処理とは独立して発達することを示すため、今後の研究に向けた非常に興味深い問題を提案することとなった (Perea, Nakayama, & Lupker, 2016, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory and Cognition)。 日英バイリンガルが英単語(L2語)を認識する際には、視覚的/表記的に類似した単語間における競合が起こらないことを、6つの実験で示した研究の論文執筆がほぼ終了した。L2語の語彙競合は、フランス語/英語バイリンガルで観察されていることから、この差は第一言語と第二言語の表記文字の同異によるものである可能性が高い。この論文は近日国際誌に投稿される予定である。 また、バイリンガルの単語処理において、英単語→意味→日本語単語(e.g., "book"→意味表象→ "本")のアクセスが出現頻度により異なるかを検証した研究成果(Nakayama, Lupker, Itaguchi, 2017, Bilingualism: Language and Cognition), 及び, 上記のつながりがバイリンガルの英語力により強化されることを発表した論文が国際誌に掲載された (Nakayama, Ida, & Lupker, 2016, Bilingualism: Language and Cognition)。
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