研究課題/領域番号 |
15K04230
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
二宮 衆一 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20398043)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学習のための評価 / 形成的評価 / 信頼性 / 妥当性 / 教師による評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、4つの研究課題を設定している。2017年度は、その中の1つである形成的評価や「教師による評価(teacher assessment)」の妥当性と信頼性についての研究を進めてきた。具体的には、「学習のための評価」の理論的発展の中で進められてきた「教師による評価」の信頼性に関する実証的、あるいはメタ分析的研究について、昨年度に引き続き、研究を進めてきた。その結果、BlackやWilliamらの研究に代表される、いくつかの研究によって、「教師による評価」の信頼性が必ずしもペーパーテストによる従来の評価に比べ、劣るものではないことが実証的に確かめられていることを確認できた。 また、「教師による評価」に代表される形成的評価については、信頼性のみならず、妥当性についても、新しい考え方が提唱されていることも分かってきた。例えば、イギリスではNewtonやStobart、Crooksらによって、アメリカではBrookhartやBossらによって、近年の「妥当性」に関する新しい知見、具体的には「The 1999 Standards for Educational and Psychological Testing」の中で提起されている構成的妥当概念に関する議論を援用し、従来の総括的評価の妥当性とは異なる、形成的評価固有の妥当性が探究されている。それは、端的に述べるなら、形成的評価の目的である学習の改善や発展を実現できる評価のあり方を形成的評価の妥当性として新たに提起しようとするものであり、近年、そうした妥当性の捉え方が形成的評価の理論として深められつつある。そして、それは、総括的評価と形成的評価という枠組みにもとづいて論じられていた教育評価の機能そのものを再考する動きにまでつながっている。現在、こうした研究の成果をまとめ、発表する作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、2015年度のイギリスでの在外研究で収集した研究資料の分析を進めると同時に、イギリスにおいて生まれた「学習のための評価」という新しい形成的評価論が、実際にどのように実践されているのかを現地調査した。また、新しい形成的評価の理論を支える理論的支柱として提唱されている形成的評価固有の妥当性や信頼性という概念についても研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、引き続き、教育評価の機能という観点から「学習のための評価」として提唱される形成的評価の新たな理論的枠組みを探究していく予定である。さらに、そうした形成的評価の研究にもとづきながら、形成的評価と総括的評価の関係性を検討し、両者の相互補完的な関係のあり方をスコットランドやイングランドの事例を検討することで、「教師による評価」を土台とする新しい評価システムの展望と課題を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は生じた理由は、2017年度に購入予定であったノートパソコンの納品が2018年4月予定となったためである。次年度使用額として残っている助成金については、2018年4月に納品されるノートパソコンとそれに関わる備品類の購入費として使用する予定である。
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