研究課題/領域番号 |
15K04433
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
近藤 裕 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (80551035)
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研究分担者 |
熊倉 啓之 静岡大学, 教育学部, 教授 (00377706)
花木 良 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (70549162) [辞退]
舟橋 友香 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (30707469)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 算数教育 / 数学教育 / 説明 / 証明 / 能力 |
研究実績の概要 |
本研究は,算数および「証明」の学習以前の中学数学における,子どもの「証明の特性を踏まえた説明の能力」(以下,「説明の能力」)に関する実態をとらえ,その能力を高めるための学習指導モデルを開発することを目的とする.今年度は,5回の作業部会の開催及び3回の実験授業と研究協議会を実施するなど,以下の通り研究を進めた. 1.前年度に行った小学生対象の「事柄が正しい理由の説明」に関する実態調査及び実験授業から得たデータの分析をもとに,各学年の子どもの発達段階や「説明の能力」の実態を踏まえた「説明する能力の育成を志向した学習指導目標の枠組み」を設定し,質問紙調査等に基づき,枠組みの妥当性の検証を行った. 2.小学1年「100までのかず」,小学6年「三角形の面積」を事例として,子どもの「説明の能力」の育成を志向した授業のねらいを検討し,そのための教材及び発問,指示,学習形態等の学習指導法についての検討を行った. 3.小学校において,小学1年「100までのかず」,小学6年「三角形の面積」(2校)の合計3つの実験授業を実施し,授業のVTR記録,子どもたちが取り組んだ授業中のワークシート,事前・事後テストの記述などのデータを収集,分析するなど,学習指導モデルの開発を開始させた. 4.国内外において,研究の過程と結果について学会発表および論文発表を行い,意見交換を行うとともに,最新の情報の収集を行った. 5.現職教員研修,教員養成に係る講習会等において,本研究の取り組みの知見をもとにして,子どもの「説明する能力」の育成の重要性や学習指導を考える上での着眼点等ついての啓蒙活動を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,「平成28年度以降は,子どもの「説明の能力」や学習指導に関する実態把握と分析を継続的に行いつつ,「子どもの説明の様相を捉える枠組み」の設定を行う(研究課題(3)).また,準備が整い次第,学習指導モデルを計画し,授業実践や質問紙調査等を実施し,検証・改善を図る(研究課題(4)).情報収集及び研究発表は随時行う.」としている. 「研究課題(3)」については,実態調査の結果をもとに,子どもの説明を「説明に用いる根拠(数学の証明の特性)」の観点から分析し,説明の質の高まりをとらえるための水準を仮設定し,「問題の正答率(説明している問題に対する答えの判断の正しさ)」との関係を分析することを通して学習指導目標としての妥当性を検証し,「説明する能力の育成を志向した学習指導目標の水準」を設定した. 「研究課題(4)」については,小学1年「100までのかず」,小学6年「三角形の面積」を事例として,5回の作業部会において,「事前テスト」,「説明する力を育成するための問題」,「学習指導案:授業のねらい,問題の提示(目的・問題意識のもたせ方)の工夫,子どもの多様な考えの予想とその扱い,教師の発問や指示,学習形態(個人,グループ,一斉,反転学習形式等),学習のまとめ」,「事後テスト:学習の評価」を,研究メンバーと授業者とで検討する等して,学習指導モデルの開発を開始させた.合計3回の実験授業や子どもの活動の記録の分析にもとづき,学習指導モデルは随時見直されている. 本研究の過程と結果を,国内・国際学会において,論文及び口頭発表を行った.また,全国及び県規模,各学校における現職教員研修や教員養成の場等において,子どもの「説明する能力」の育成の重要性や学習指導を考える上での着眼点等ついての啓蒙活動を行った(合計8回程度). 以上から,平成28年度の研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究はおおむね順調に進展しているので,引き続き,研究計画に従って研究を進めていく. 研究計画では,平成29年度は,「引き続き,調査研究,授業研究を中心として,「説明の能力」の学習指導モデルを検討するとともに,授業実践を通して,学習指導モデルの妥当性と有効性を保証するエビデンスの蓄積を図る.また,研究のまとめとして,学会発表,研究報告書作成の他,学校現場向けにわかりやすく成果をまとめたスライド資料等を作成する.」としている. そこで,平成29年度は,これまでに検討してきた学習指導モデルを土台にして,さらに多くの授業を計画・実践し,そのデータの分析を行うことを通して,より妥当性と有効性の高いモデルに改善することを目指す.また,研究のまとめの一つとして,現職教員研修及び教員養成の場において,一般の現職教員や教員を目指す学生に,「子どもの説明の能力育成」に関心を持ってもらったり,その重要性を感じてもらったりすることができるような,わかりやすいスライド資料等を作成する.それを用いた啓蒙活動も具体的に実施したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間内に研究協力者の一人である海外研究者(英国)と面会し研究協議を行う考えであり,平成28年度中の実施の可能性を検討していたが,年度内の実施には至らなかったため,そのための旅費,宿泊費,会議費が,次年度使用額として生じることとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
研究期間内に計画していた海外研究者(英国)と面会しての研究協議は,メール及び国際学会で面会する機会を利用して行うこととする.当初,旅費,宿泊費,会議費として使用する計画であった予算額は,平成29年度に本格化させる授業実践において必要となるVTR記録,授業の発話記録の編集(テープ起こし),大学外での授業打ち合わせ等の作業を円滑に効率よく行うための機器(VTR機器の老朽化に伴う機器の新調,音声データ聞き取り環境の整備,ノートPC)の購入に充てる.使用目的に照らして,平成29年度の初めに予算を執行する.
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