本研究の目的は,理科授業における教授・学習過程を可視化することで,授業者の授業構想,そして授業の実施から省察に至るまでの過程を支援するシステムを構築することにある。ここでは,平成30年度の研究計画に掲げた視点から研究実績の概要をまとめる。 (1)授業実践:理科授業構成支援システムおよびそれを支える下位システム(教授・学習プロセスマップ,教師の教授活動調整モデルなど)を検証するために,小学校においては教師経験5年程度の教師2名を対象にそれぞれ3回の小学校理科の授業支援を行った。対象の教師からは,初回の授業実践において教授・学習プロセスマップの考え方に賛同が得られた。そして研究授業2回目の学習指導案の作成から,教授・学習プロセスマップの考え方を生かした学習指導案を作成して授業に臨んでいた。また、そうした考えに基づく授業実践であったため,研究協議の内容も深められた。 (2)研究成果の発表:本研究において得られた成果を学会等において発表した。研究に関わる意見を収集することが出来た。特に教員の育成担当などの関係者に興味深く聞いていただき,また現状の問題点等についての示唆をいただいた。 (3)論文等:教授・学習プロセスマップ,教師の教授活動調整モデルを援用し,理科授業への発展を志向した生活科授業について論文としてまとめた。また,本研究で得られた知見を生かし,子どもの協働的な学びをICTの利活用によって考えの可視化や情報交流を促進する授業についてまとめ,発表した。 (4)実践事例の増加:上述の実践のほか,本研究の研究成果として,小学校,中学校における実践を行い,学会等において報告することができた。 (5)教授スキル向上につながる子どもの概念構築に関わる事例収集として,例えば,新しい学習指導要領において新たに導入される小学校「音」に関する子どもの素朴な考え方について調査を行った。
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