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2015 年度 実施状況報告書

脳性麻痺児の「個にとっての意味」を重視したライフ・ベースト・サポートモデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 15K04552
研究機関金沢大学

研究代表者

吉川 一義  金沢大学, 学校教育系, 教授 (90345645)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード学習者としての行為主体 / 状況に対する知識 / 自己認識 / 効力感 / 行動動機の高揚 / 対処行動の変容 / 知識と自己認識の更新 / 主体的自己の確立
研究実績の概要

本研究は、肢体不自由児を自律的な生活者へと育てるためのライフ・ベースト・サポートモデルの構築であり、自己決定能力を高めることを中核とする。このため、日常生活での自己決定場面を対象として、判断実施後の省察過程とこれを支援する手続きを明確化する。省察とその支援のために対象者の自己決定時の言動と状況への対処行動を映像記録した。この記録映像をもとに対処判断と行動計画の過程を言語化させながら支援者が質問を加えた。質問の観点は、特定状況に対する「知識」、これに基づく「自己能力の評価(自己認識)」、「対処方法の選択理由」、「結果の評価(事実判断)」、「結果に対する満足度とその理由(価値判断)」とした。
省察後、同状況に対して再対処させ、個人の満足度が満たされるまで繰り返した。これらの資料をもとに、個人にとっての「意味」の生成に関わる要素とこれらの関係を検討し、支援者が状況に対する意味を解釈する際の手続きを検討した。
結果、状況への対処には、その理解と対処後の状況変化イメージ(達成イメージ)が影響した。すなわち、達成イメージに基づく自己能力評価の低さが効力感を低め、対処行動の動機を低下させる悪循環が明らかとなった。この悪循環を断つ上で、達成イメージの修正が有効であった。達成イメージの修正により、状況理解のための知識が修正された。このことは対処のための自己能力評価を変えて効力感を高めた。その後、行動動機の高揚が見られ、これに伴い対処行動の頻度が高まり種類も多様化した。結果、特定状況への知識量が増加した。これより、知識が自己認識を方向付け、両者の関係で効力感が決まり、対処行動の計画と満足度に影響する力動的な関係が確認できた。肢体不自由児には、運動機能障害故に行為の介助・代行され易い、行為時間が十分に確保されない等、生活における行為主体の経験の積み方が生活事象への知識を歪めると思われた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究遂行のための時間確保に苦慮し、当初予定していた実践者に対する研究成果の公開と意見聴取、教育・医療・福祉専門職との検討の機会が十分に持てなかった。今後、この機会の確保に努める。

今後の研究の推進方策

肢体不自由児は、普段の生活行為において、介助・代行されやすく、また、行為時間を十分に確保されにくい(支援者による見守りの不十分さ)。このような生活状況は、生活事象がもつ状況に際して個が抱く意味に影響することが明らかとなった。そして、この意味に影響する要素(知識・これに基づく自己能力の評価(自己認識)・対処方法の想起・結果の評価の事実判断・結果に対する満足度(価値判断))とその力動的関係を同定した。これより、今後、状況判断と対処にかかる各過程とそこでの要件を規定した支援の原型モデルを作成する。下記の検討課題を遂行する。
検討課題1:ライフ・ベースト・サポートモデルの原型作成:原型作成のための対象者を「幼児・低学年期」「中学年期」「高学年期」「中学部期」「高等部期」「成人期」の6つのライフステージにある者とし、発達特性を考慮した類型モデル(原型)を作成する。そして、原型モデルの適用には、その手続きをリードするためのワークシートを作成する。
検討課題2:対象者と支援者の協働性の解明:類型モデル検証には、インフォームド・コンセント(専門職からの一方向的説明と実施)をさらに発展させたインフォームド・コオペレーション(協働企画・実施・評価)の過程として実施する。本研究は、自律的な生活者へと育てることを重視する。これまで取り上げられることが極めて少なかった対象者の満足度を指標として、対象者の満足度と自己管理行動の動機付けの変容の関係を検討する。すなわち、支援における当事者と支援者の協働性の有り様とその要件を検討する。
検討課題3:原型適用と実践検証によるライフ・ベースト・サポートモデルの構築:原型適用事例へのフォローアップ検討に加え、原型モデルを新たな事例に適用しながら適用事例を増やし実践検証を重ねる。これより、発達特性ごとの類型モデルに修正を加えながら完成度を高める。

次年度使用額が生じた理由

H27年度の研究成果に関して、教育・医療・福祉の専門職からの専門的知識の提供を受ける予定であったが、このための時間が確保できなかったことから実施できなかった。

次年度使用額の使用計画

H28年度に、教育・医療・福祉の専門職と本研究の知見に関する検討を行い、専門的知識の提供を受ける。そのための謝金として使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] ICFから特別支援教育の積弊を再考する2016

    • 著者名/発表者名
      吉川一義
    • 雑誌名

      障害者問題研究

      巻: 43 ページ: 258-265

    • 査読あり

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公開日: 2017-01-06  

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