研究課題/領域番号 |
15K04552
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉川 一義 金沢大学, 学校教育系, 教授 (90345645)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳性麻痺児 / 自律的な生活者 / 自己認識の修正 / 専門家との協働性 |
研究実績の概要 |
本研究は、脳性麻痺児をより自律的な生活者へと育てるためライフ・ベースト・サポートモデル(LBSM)を提唱し、その定式化を試みるものである。28年度は、LBSM原型による支援計画の策定と実践検証(検討課題2)に取り組んだ。 1)LBSM原型の作成のために、まず「個にとっての意味」の解釈過程を支援計画策定過程に組み入れたLBSM原型を作成した。その際、下記視点からの検討を行いつつ、計画および支援・評価に関する妥当性を検証した。①障害実態把握方法(診断的評価)の検討、②支援計画の目標に即した指導目標・内容の検討、③生活・教育環境設定の可能性を含めた指導内容・方法(形成的評価方法)の検討、④遡及的資料と形成的資料の分析・総合による支援計画目標の再検討、⑤本人・家族の自己評価を含めた総括的評価方法の検討、⑥基礎資料の再検討、⑦実践資料(基礎資料・診断的評価・形成的評価・総括的評価等)の蓄積方法についての原型書式を作成できた。 2)本人と支援者の恊働性の解明に取り組んだ。本研究では、支援をインフォームド・コンセントから、さらに発展させたインフォームド・コオペレーションの過程として実施し、当事者との「協力関係」を強化する試みを行った。結果、本人の自己決定能力を増進し、実行結果から自覚的に現状問題を学ぶことに重要な意味をもち、本人の自己管理行動における自律性獲得に大きく役立つものと期待できた。一方で、インフオームドコオペレーションの効果の最大化を求める上で、生活状況の変更や本人・家族の障害受容、価値観の変化に伴う支援内容の修正が必要とされた。この他、協働関係の形成に困難さをもたらす要因として、支援者の専門性(職業)に対する当事者のイメージの影響が大きいことがわかった。このことは、当事者の「生活ニーズ」をもとに、専門的知見の活用を検討する上で課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度までに計画した課題については概ね順調に遂行できている。 その上で、H28年度に実施した検討課題2の一部である「本人の自立性を育成するための専門家との協働性の解明」において、支援する専門性に対して当事者が抱くイメージの関与の影響がわかった。この課題については、H29年度課題の遂行と合わせて、実施する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を踏まえ、29年度は、LBSM構築とマニュアル作成(検討課題3)に取り組む。 1) LSBMの構築:原型の実践検証をへてLBSMを構築する。その際に、28年度「検討課題2」の視点にもとづいて、妥当性を継続的支援の過程で実践的に検証する。成果を共同研究者や研究協力者との合同検討会を経て、公開研究会を開催して公表する。[資料整理補助謝金、国内旅費、会議費] 2)「LBSMマニュアル」作成:実践検証の結果を総合的に分析して、LBSMによる支援計画策定マニュアル(発達・障害関係基礎資料分析、機能評価、ニーズ調査と分析、計画作成と決定手続き)と実践マニュアル(支援の内容・方法、形成的評価の方法、本人・家族による評価を含む総括的評価、支援計画・目標の修正手続き)を作成する。尚、マニュアルの公刊には、関連領域の各専門家に査読を依頼して妥当性と有効性を担保する。 [マニュアル作成費、専門的知識の提供謝金] 3)研究のまとめと成果の公表:本研究の成果を「LBSM:当事者の意味にもとづく支援マニュアル(事例集を含む)」としてまとめて公刊する。また、3年間の研究成果を、共同研究者や研究協力者との合同検討会を経た後、公開研究会を開催して公表する。特に地元にたいしては、教委(県教委・市教委)との共催による実践研究会を開催して研究成果を公開し、広く意見を求める。
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