研究課題/領域番号 |
15K04877
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
神山 靖彦 琉球大学, 理学部, 教授 (10244287)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計算機 / ロボット運動 / 多角形のモジュライ空間 / モース理論 / ホモロジー群 / 対合 / タンパク質 / 内角 |
研究実績の概要 |
1990年代からロボット運動の配置空間が盛んに研究されてきたが、特に有名なロボットとして多角形のモジュライ空間が挙げられる。これはユークリッド平面または空間における、等辺多角形全体のなす空間の性質を調べるということである。等辺多角形は始点と終点が一致した閉じた鎖と見なすことにより、ロボットの一つと解釈される。このモジュライ空間の研究には、モース理論が非常に有効である。例えば、モース理論を駆使することにより、このモジュライ空間のホモロジー群は決定されている。今年度の研究成果は次の2つである。 1. 上述のとおり、ユークリッド平面における等辺多角形のモジュライ空間のホモロジー群は決定されているが、より精密な情報であるコホモロジー環は、ここ20年ほどの世界的な研究にもかかわらず決定されていない。難しい理由を一言で言えば、中間次元のホモロジー類を把握することの困難さということである。つまり、中間次元にはトーラスから来ないホモロジー類があり、その挙動を調べることは誰もできなかった。今年度はこの把握に成功した。中間次元のホモロジー群には対合が作用しているが、その表現を決定した。結果は従来の予想を覆す、非常に驚くべきものであった。表現を決定するために、計算機を活用した。 2. ユークリッド空間における等辺多角形のモジュライ空間はある程度理解されているが、近年、タンパク質など化学の分野との関連において、多角形の内角に制限を与えて得られるモジュライ空間が研究され始めている。辺の数が小さい場合は若干のことが知られていたが、一般の辺の数の場合には何も知られていなかった。この方面で一つの成果を得た。証明の鍵は、モース理論におけるモースの補題を退化する孤立臨界点の場合に一般化したことで、それ自身興味深い。この一般化されたモースの補題を、問題とするモジュライ空間に適用するために、計算機を駆使した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要における1, 2の研究成果は、ともに一定レベルの国際誌に出版済みである。1についてはStanford大学のMilgram教授から、重要で精密な結果であるとコメントを受けた。2についてはMathSciNetでレビュー済みであり、結果は興味深いとコメントされている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要における2の研究成果は、内角など幾つかの制限を与えることにより得られるモジュライ空間は一般次元の球面となる、ということである。この制限は若干強いとも言える。制限を弱くした場合、球面以外にどのような空間が生じるか研究する。例えば、モジュライ空間が2次元の場合、それは連結か?連結成分の種数は幾つか?ということを問題とする。モース理論が議論の中心となると予想されるが、計算機を駆使することが不可欠である。 2015年11月に、Kyungpook National UniversityのYoung Jin Suh教授が、報告者の一連の仕事に興味があると言うことで訪問してきた。また、London大学のFarber教授からも、過去に出版した報告者の論文について研究連絡のメールを受けた。それ以前に彼らとは連絡したことがなかったが、報告者が過去に書いた論文が興味を持たれているということなので、今後も連絡を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文に挿入する図を作成するためWindowsを購入する必要があった。当初、300,000円を予想していたが、278,834円で購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費の一部として、合わせて使用する。
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