研究実績の概要 |
代数解析の理論と計算代数の手法に基づくことで, 複素解析的な特異点の研究を行った。27年度は, 研究代表者と分担者, 連携研究者が協力して, 特異点の複素解析的な諸性質を解析するために必要となるいくつかの基本的な計算アルゴリズムを新たに構成しプログラムを数式処理システムに実装した。また, 特異点論の未解決問題の研究, 解析を行う際に有効なアルゴリズムの導出を行った。具体的な研究成果んとしては, (i) スタンダード基底の項順序を変換する効率的アルゴリズム, (ii) 収束冪級数環における拡張イデアルメンバーシップ問題を解くアルゴリズム, (iii) 特異点の変形族に対し, 複素解析的不変量であるTjurina algebraに対するパラメータ付き局所コホモロジーを求めるアルゴリズム, (iv) B. Teissier の導入した複素解析的不変量を求めるアルゴリズム, (v) 孤立特異点おける limiting tangent space を構成するアルゴリズム, (vi) イデアルの integral closure に関連したアルゴリズム, (vii) 特異点の変形族に対し, 対数的ベクトル場と Bruce-Roberts ミルナーを求めるアルゴリズム, (viii) 超曲面の b-関数と関係するホロノミーD-加群を求めるアルゴリズムを構成した。また, D. Siersma らの非孤立特異点に対し, vanishing cycles の vertical monodremy を解析した。 これらのアルゴリズムのうちの幾つかについては, プログラムを数式処理システムに実装し, 計算実験によりアルゴリズムとしての性能の評価を行った。これらの研究成果を国内外で開催された学会, 研究集会, 国際会議等において発表し, 論文の執筆を行い, 国際誌に投稿, 発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
幾つかのアルゴリズムに関しては, 試作, 改良を終えプログラムの実装を完了させることができた。また, 構成したアルゴリズムは数式処理の観点から見ても計算効率がよく, 研究を行う上で有用な道具となることが示せた。さらに, イデアルの integral closure に関連し, 研究当初は予想していなかった新たな研究成果を得ることできた。以上のことから, 27年度は当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度以降も, 27年度に引き続き, 研究代表者と分担者が共同して本研究を遂行する。研究代表者と分担者が互いに出張し研究連絡を取りながら研究をすすめる。作成した研究用のプログラムを用いて, 種々の計算実験を行い, 複素解析的特異点の諸性質を研究する。28年度からは, complete intersection 特異点の研究, Gauss-Manin 接続の研究等を本格化させる。関連する研究集会, 国際会議等に参加し, 研究成果の発表を行うとともに, 当該分野の専門家との研究討議を重ねる。
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