当研究期間における主な研究成果は以下の3つである.(1)古典力学系の双曲型不動点において,対応する量子力学系の特異性伝播の定理を得た.双曲型不動点に付随する安定多様体上で準古典波面集合が空集合であれば,不安定多様体上でも準古典波面集合が空集合であるという定理を証明することに成功した.(2)行列値ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素のスペクトルシフト関数は,スカラーの散逸関数を持つとき,準古典において完全な漸近展開を持つことを証明した.(3)行列値ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の量子共鳴の準古典漸近分布を,エネルギー交差が起きる一次元2×2の典型的なモデルに対して研究を行った.
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