研究成果の概要 |
楕円関数を用いて微分方程式のすべての候補となる解の表示式を求め,それをもとに,大域的分岐構造を凝縮した超越方程式を導き解析する,独自の手法を深化させさまざまに適用範囲を拡げることができた. 例えば, cross-diffusion 方程式で空間1次元の場合の楕円関数による解表示から示唆を得た,空間多次元の場合の定常解の存在と安定性に関する結果を得た.また, 線形化固有値問題については, Allen-Cahn 型反応拡散方程式の場合に線形化固有値問題の固有値を決定する固有方程式を発見し,すべての固有値と固有関数の表示式を厳密に求めた.さらに,拡散係数が零に近づいたときの固有値の漸近公式も得た.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
従来,微分方程式の解の存在のための条件を求めたり,局所的な解の分岐構造に対して,現代的関数解析的な手法により多くの数学的研究がなされ現在も発展を続けている.さらに詳しく精密に解の形状を知ること,解の大域的な分岐構造の解明はより困難な問題である.しかし,生物学の発生や生命現象等にあらわれる数理モデルに対して,数学的な結果を利用できるようにするためには,是非とも克服すべき問題である. 我々は,基本的で典型的ないくつかの微分方程式で記述される数理モデルに対し,特異摂動問題の解の精密な陽的表示,さまざまな極限形状の精密表示,2次分岐等も含めた解の大域的分岐構造等の数学的解明を行なった.
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