研究課題/領域番号 |
15K05287
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
小西 啓之 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70178292)
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研究分担者 |
平沢 尚彦 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (10270422)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 降雪量 / 光学式降水量計 / 降雪粒子観察 / 天秤式降雪量計 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、USB 顕微鏡を用いた降雪粒子連続観測装置の試作およびそれを用いた降雪粒子比較試験観測を行った。 降雪粒子連続観測装置は、降雪粒子撮影部と降雪粒子除去部から成り、連続して降雪粒子の形状が記録できるような装置を試作した。降雪粒子撮影部は、USB 顕微鏡カメラ(Dino-Lite)を鉛直上向きに設置しその上のガラス板に落下した粒子を下から撮影し、USBケーブルを介して接続したパソコンに30秒間隔で横2.7mm×縦1.8mmの静止画像を連続記録するようにした。また、降雪粒子除去部は、顕微鏡上のガラス板に降り積もった雪粒子を除去するためノズルから間欠的に圧縮空気が送られるようタイマー、電磁弁、ポンプなどを配置し、30秒間隔で顕微鏡画面がクリアになるように送風装置を組み立てた。 降雪粒子比較試験観測として、日本一寒い町と知られる陸別町で降雪観測を12月18日から2月7日に行った。観測項目は、光学式降水量計(OTT Parsivel,LPM)による降雪粒子の粒径および落下速度、天秤式降雪量計による高感度の微小降雪量変化、降雪粒子観測装置による降水粒子の形状である。観測期間中の17日間、のべ約52時間に降雪が記録されたので、今後これらの結果を相互に比較し光学式降水量計の特性を明らかにし、精度良い降水量推定法の向上に活かす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は補助金の採択が10月末と遅かったので、夏季に行う予定の予備実験等があまり行えず冬季に入って慌てて準備をするという問題もあったが、雪結晶観測装置などの冬季観測に主体となる観測測器の試作や設置は間に合い、12月から2月に陸別で降雪観測を予定通り行うことができた。観測には光学式降水量計3種5台、天秤式降雪量計1台、降雪粒子観測装置4台などを用い、12月18日から2月7日の観測期間中に、暴風雪により測定器が雪に埋もれたり、予期せず停止したこともあったものの、観測装置はほぼ順調に動作しデータを収録することができた。降雪は17日間、のべ約52時間に記録され、今後、収録したデータを用いて降雪量推定法の向上に活かす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成27年度冬季の観測データを整理し、降雪量推定法の向上に活かす予定である。具体的には次の4項目のデータ解析(1.天秤式降水量計データによる降雪期間の抽出。2.降雪粒子観察装置の画像による降雪期間の降雪粒子判別。3.降雪期間の光学式降水量計による粒径および落下速度分布比較。4.降雪期間の気温風速等の気象要素変動比較。)を行ったうえで、これまで使用していた降雪量推定法の改善を行う。例として粒子の形状(板状であるか柱状であるか)の違いによって、光学式降水量計の測定値から推定した降雪量にどのような差が生じているか、あるいは風速によって捕捉率がどの程度変化するかを調べ、粒子の形状や風速による降雪量の補正係数を求めるなどの考察を行う。 次に平成28年度の観測に向けて、大雪時でもメンテナンスなく長期間測定できる天秤式降雪量計の開発を行う。天秤式降雪量計は風袋内に溜まる降雪の質量から降雪強度を測定するので積雪深が風袋の高さを超える場合は測定不可となる。この回数を減らすためにできるだけ深くかつ揺れにくい安定した風袋を用いた天秤式降雪量計を観測期間前までに試作し、天秤式降雪量計の観測期間の延長を目指す。 冬季の観測項目は平成27年度と同様に光学式降水量計、天秤式降雪量計、降雪粒子観測装置を用いて行う予定である。 これらを通して、光学式降水量計の種々の降雪に対する基礎データを取得し、降雪強度のより良い推定法に活かす予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の採択決定が10月末と遅れたため、予定していた光学式降水量計の購入ができず、次年度に繰り下がったため。
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次年度使用額の使用計画 |
光学式降水量計の購入に充当する。
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