本研究の目的は、降雨量より測定が難しい降雪量を近年利用されるようになった光学式雨量計を用いて、南極などの寒冷地に降る降雪量をより精度良く推定する手法を見出すことである。降雪量は降雨量の測定に比べ難しく、自動で連続的に正確に計測できる測器は、未だ存在しない実情がある。 光学式雨量計は、幅数㎝のシート状のレーザー光中を落下する降水粒子の遮光幅と遮光時間から粒径と落下速度を測定する。粒子を球形と仮定し体積を求め、落下速度に応じて密度を与えると、降水量を計算上推定することができる。この推定値と電子天秤を用いた重量法から求めた降雪量の測定値を比較し、仮定した粒子の密度を降雪粒子の形状やタイプ毎に改善するため、降雪粒子の連続自動観測法の開発も合わせて行った。 平成27年度は、まずUSB顕微鏡を用いた降雪粒子の連続自動観測装置の試作を行ったのち、冬季に北海道陸別で光学式雨量計などの降雪量観測と共に降雪粒子観測の比較観測を行った。次に平成28年度は、観測したデータを用いて、降雪量の観測値と推定値の比較を行い、降雪粒子連続自動観測装置で得られた降雪粒子の形状との比較検討を行った。その結果、樹枝状の雪片のような相対的に粒径が大きく落下速度が小さい粒子が多いときは、降水量の推定値は小さくなり、逆に霰状の雪粒子のように相対的に粒径が小さく落下速度が大きい粒子が多いときは、降水量の推定値が大きくなる傾向が見出され、例数は少ないものの降雪量を見積もる方法を改善する必要があることを示した。これを受けて、平成28~29年度は比較観測の例数を増やすため、降雪粒子連続自動観測装置の個数も6台に増やし陸別で降雪量観測を継続し、比較観測を行った。これらは順調に動作し、データは得られたが現時点ではまだ解析途上で、精度良い降雪量推定法の向上に向けて比較検討する予定である。
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