研究課題/領域番号 |
15K05370
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研究機関 | 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター) |
研究代表者 |
神吉 隆司 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 教授 (40524468)
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研究分担者 |
永田 正義 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00192237)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 球状トーラス / 高ベータ自己組織化プラズマ / 同軸ヘリシティ入射 / 2流体平衡 / 2流体効果 / 2流体緩和 / シアフロー / プラズマ流 |
研究実績の概要 |
流れのある2流体平衡問題を考える上で,イオン表皮長とプラズマの特性長の比で表される2流体パラメータは2流体効果の指標として重要である.このパラメータは一般的に0.03-0.2程度で小さく,平衡方程式系は特異摂動問題になる.この問題を解決するため,これまでnearby-fluidsオーダリングが用いられてきたが,このオーダリングが擬似的なアルヴェン速度と音速度で特異点を生じさせる.nearby-fluidsオーダリングを用いない,この問題を解決した2流体平衡コードを開発し,球状トーラス装置NSTXに適用した.具体的には有限差分されたグリッド数を多くとることにより,平衡解の高精度化を図った.グリッド数を多くとることにより生じる計算時間の増大を抑制するため,数値解法を古典的な反復解法であるSOR法から高速反復解法であるMulti-Grid Method(MGM)に変更した.MGMによる平衡解の収束特性について調べ,数値計算結果からMGMが平衡方程式を数値的に安定,高精度,高速に求めることができる有効な方法であることを確認した. HIST装置での同軸ヘリシティ入射実験の維持過程において,中心オープン磁束コラム(OFC)領域に反磁性トロイダル磁場が形成されていることから,既存のコードを用いて,2流体平衡の観点からポロイダル流速とトロイダル磁場の磁性の関係について調べた. OFC領域では電子流速に対する流れ関数が正,イオン流速に対する流れ関数が負で,イオンと電子の流速が反磁性に寄与し,閉じた磁束(CF)領域では電子,イオン流速に対する流れ関数が共に負で,電子流速が常磁性に,イオン流速が反磁性に寄与している.CF領域ではヘリシティ入射の増大に伴って, 電子流速に対する流れ関数が減少しイオン流速に対する流れ関数に近づき,トロイダル磁場が反磁性から常磁性に近づくことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の1月末に研究費の使用が可能になったため,コード開発用の計算機サーバーが使えるようになったのが,その年度末になってしまった.平成27年度は,実質,備品を購入するだけで終了してしまった.本格的なコード開発は平成28年度に入ってからであり,当初の計画よりも遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
nearby-fluidsオーダリングを用いない2流体平衡コードを開発し,球状トーラス装置NSTXに適用した.この適用結果の正当性を確認するために,先行研究(A. Ishida and L.C. Steinhauer, Phys. Plasmas Vol. 19, 102512 (2012))と比較検討をする.この先行研究の2流体平衡計算では,NSTX装置で形成されているプラズマが低衝突モデルが妥当であると考えられている.一方,小型ヘリシティ駆動球状トーラス装置であるHIST装置では,低衝突モデルでなく,断熱モデルが妥当であると考えられるため,コードを修正する必要がある.このコードの修正を行うことによって,断熱モデルによるヘリシティ駆動球状トーラスの平衡計算を行う.このとき,実験結果をうまく再現できるようにエントロピー,一般化エンタルピー,ポロイダル流速の流れ関数の適切な関数形を採用する必要がある.平衡計算結果とHIST装置で観測される実験結果と比較しながら,平衡の性質を調べる.HIST装置ではマッハプローブとイオンドップラー分光器を使用して,トロイダルとポロイダル両方向のプラズマ流の計測が可能であるため,実験との詳細な比較検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費のほとんどが旅費であるため,学会の開催場所,為替レート等で未使用額が生じる.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も研究費のほとんどを学会発表等の旅費として使用する.
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