研究実績の概要 |
2流体平衡方程式系は2流体パラメータが非常に小さく,特異摂動問題になる.この問題を解決するため,これまでnearby-fluidsオーダリングという手法を用いていたが,同オーダリングは擬似的なアルヴェン速度で特異点を生じさせる.この問題を解決した高精度・高速化した2流体平衡コードを開発した.同オーダリングを用いず,高精度化するためにグリッド数を多くとることになるが,計算時間を多く必要とする.そこで,高速反復解法であるMulti-Grid Method(MGM)を採用し,電子系平衡方程式を解いた.米国の球状トカマク装置NSTXの境界条件に適用し,適用結果の妥当性を確認するために,先行研究(A. Ishida and L.C. Steinhauer, Phys. Plasmas Vol. 19, 102512 (20112))と比較検討を行った.その結果,電子系平衡方程式から得られる平衡解(ポロイダル磁束)が先行研究で得られているものと一致しており,平衡コードの正当性を確認した.さらに,数値計算結果から平衡解の収束特性について調べ,以下のことが判明した.(1)電子系平衡方程式の右辺の平均値は,グリッド数に対して逆2乗収束する.(2)平滑化ステップでDamped Jacobi法を用いたMGMの残差の縮小率は,同法による残差の高周波数成分の効果的な除去により,平滑化ステップでGauss Seidel法やSOR法を用いたMGMよりも大きい.(3)残差が8.7x10**-11では,平滑化ステップでDamped Jacobi法を用いたMGMが最も計算速度が速く,SOR法のみの60倍である.(4)Damped Jacobi法を採用したMGMは軸対称2流体平衡方程式を数値的に安定,高精度,高速に解くことができる有効な方法である.
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