研究課題
酸化ストレスを原因とする肥満から発展するメタボリックシンドロームは、脳梗塞や心筋梗塞のリスクファクターとなることから、予防法の開発が急務である。我々はこれまでに、光合成細菌の直鎖型ケト化カロテノイドに優れた抗酸化能力が備わっていることを見出してきた。本研究では未だ動物実験では使われたことがない直鎖型ケト化カロテノイドを調べることで、メタボリックシンドロームの予防効果について検討する。また、直鎖型ケト化カロテノイドを投与したマウスを用いたRNAシークエンスによる遺伝子発現の網羅的解析を行うことで、カロテノイドの新規有効性を見出し、その効果を検証していく。平成28年度においては、糸状性酸素非発生型光合成細菌がもつ、糖鎖型ケト化カロテノイドにも着目した。カロテノイドは基本的に脂溶性であり、血液中では脂質体として運搬されることが予想されるが、糖鎖型カロテノイドは血中に溶け込み、それ自体で運ばれることが期待される。糸状性酸素非発生型光合成細菌Chloroflexus aurantiacusは糖鎖型ケト化カロテノイドである4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucosideをカロテノイド合成の最終産物とし、その中間体としても共役二重結合が異なる糖鎖型ケト化カロテノイドを合成する。しかし、この合成経路はこれまでに分かってなかった。そこで、大腸菌内での発現系を用いて候補遺伝子を調べたところ、crtB, E, I, Y遺伝子により4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucoside合成の中間体であるβ-caroteneの蓄積が確認された。このことにより、これらの遺伝子はこの細菌内でのカロテノイド合成系で働いていることが考えられた。現在のところ、その先の合成系についても同様に調べている。
2: おおむね順調に進展している
新たにChloroflexus aurantiacusがもつ糖鎖型ケト化カロテノイド4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucosideに着目し、その合成経路を調べる目的で、大腸菌でのこのカロテノイドの生産系の構築が軌道に乗りつつある。直鎖型ケト化カロテノイドと合わせ、今後の実験を進めていく予定である。両カロテノイドが調整出来次第、動物実験に用いていく。
平成29年度においては、Chloroflexus aurantiacusの4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucoside合成経路を調べるとともに、大腸菌においてのこの色素の生産株の作製を行っていく。その後には、直鎖型ケト化カロテノイドとともにin vitroでの実験を行っていく。さらに、これらの色素の基礎的データが揃ったら、それを踏まえたうえで動物実験を行っていく。マウスを用いた、それぞれのカロテノイドのメタボリックシンドロームに対する予防効果を調べていく。直鎖型ケト化カロテノイドの肥満防止効果と糖尿病の改善効果について検討する。肥満防止においては、食事性肥満誘発マウスを、糖尿病に関しては、2型糖尿病モデルマウスを用いて実験を行う。
「現在までの進捗状況」で示した通り、平成28年度はChloroflexus aurantiacusの4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucoside合成経路を調べることを新たに着手したため、今年度予定していた動物実験に用いる費用を使用しなかった。そのための研究費が次年度使用額として生じた。
平成29年度には、直鎖型ケト化カロテノイドと糖鎖型ケト化カロテノイドの抗酸化能力の測定と動物体内への吸収効率の検討を研究計画に入れており、その費用として用いる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 5件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 8件) 備考 (1件)
Human Genomics
巻: xx ページ: 印刷中
Clinical Epigenetics
Annals of the Rheumatic Diseases
巻: 76 ページ: 869-877
10.1136/annrheumdis-2016-209632
European Journal of Human Genetics
巻: 25 ページ: 499-508
10.1038/ejhg.2016.18
PLoS one
巻: 12 ページ: e0175649
10.1371/journal.pone.0175649
Nature Communications
巻: 8 ページ: 14397
10.1038/ncomms14397
Investigative ophthalmology visual science
巻: 58 ページ: 1008-1016
10.1167/iovs.16-20612
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 486 ページ: 130-136
https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2017.03.012
Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 9 ページ: 42-46
https://doi.org/10.1016/j.bbrep.2016.11.007
CrystEngComm
巻: 18 ページ: 7722-7727
10.1039/c6ce01671e
ChemPlusChem
巻: 81 ページ: 595-597
10.1002/cplu.201600494
FEBS Letters
巻: 590 ページ: 3425-3434
10.1002/1873-3468.12387
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 25360
10.1038/srep25360
Plant and Cell Physiology
巻: 57 ページ: 1048-1057
https://doi.org/10.1093/pcp/pcw045
Gastroenterology
巻: 150 ページ: 1171-1182
https://doi.org/10.1053/j.gastro.2016.01.035
Photosynthesis Research
巻: 130 ページ: 1-3
10.1007/s11120-016-0220-7
巻: 128 ページ: 235-241
10.1007/s11120-016-0228-z
巻: 6 ページ: 24767
10.1038/srep24767
巻: 75 ページ: 652-659
10.1136/annrheumdis-2014-206191
http://research.kurume-u.ac.jp/data.php?scode=82055632889065