研究課題
前年度までに、岐稲エリアの土地改良・河川改修事業と、その影響化にあった岐阜市都市計画の実態が把握されていた。今年度は、これらを都市および地域計画的視点から解釈するための追加調査および実証を徹底した。成果は、都市計画学会への査読付き論文および発表と、国際都市計画学会(IPHS)における発表およびプロシーディングスにまとめることができた。以上から、本科研交付期間中に目的としてきた近代農業水利と、土木史分野・都市計画(史)分野との間を土木計画学的範疇として、近代的思想に基づく生産・生活システムを構築するに至る一連の水系基盤の成り立ちとその必然を、実証的に示すことが達成された。明らかになった事象は、以下の通りである。岐阜県技師吉良巖による用排水幹線再建プランの提示が、岐稲エリア全域が協力すれば乗り越えられる可能性を各関係立場にイメージさせ、輪中間の確執に囚われていた集団が、結局内務農林両省の調整をするに至り、部分的かつ利己的な改修が相対立する状況よりも統合への具体的な動きが進んだ。こうして下流から統合的な排水系統が形成されていく中、用水(忠節用水)と都市下水道の整備が上流にあたる岐阜市街地との重要な接点となる。岐阜市長に就任した松尾國松は、直ちに上記連携に岐阜市を参加させ、岐阜市技師の安部源三郎は、下流を含めた広い地域的な水収支を視野にいれた技術的な解を、既存の排水計画の徹底した研究と現状の測量を実施しながら見出していった。県と国による忠節用水改良事業はその要となり、安部は計画内容を共有しながら全国初の分流式下水道計画を同時に進め、最先端のシステムを実現したばかりでなく、経費を大幅に削減させて、市民への水洗便所普及などに力を注ぎ得た。このように、視野・連携の広がりとともに、各基盤整備事業を束ねるビジョンが柔軟に成長し、地域的な基盤が形成されたことが示された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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