研究課題/領域番号 |
15K06389
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
坂口 大洋 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (70282118)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 災害対策 / 公立文化施設 / 東日本大震災 / BCP / 南海トラフ |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績については、大きく3つの内容に集約される。 第一に28年度に着手した南海トラフの被害が予想される地域及び東日本大震災の被災地域における公共文化施設を対象としたBCPの策定状況に対するアンケート調査の詳細な分析を行った。具体的には回答対象施設の立地条件と策定状況の関連性、および各種結果の相関関係、被害状況や被害想定との策定内容の整理を行った。 第二に、実際の東日本大震災の被災地における公共文化施設の改修計画や津波避難ワークショップなどの実践を通して、公共文化施設のBCPや立地条件の周辺状況を含めたBCP策定計画のフレームワークと課題の整理を行った。具体的には東日本大震災の被災地である名取市閖上地区と南海トラフ地震の被害が想定されている徳島県阿南市などをケーススタディとして事例調査を行った。調査の結果、津波被災地域においては災害発生時には地域内の居住者(施設の状況をよく理解している人)と地域外の比較的施設の状況について理解が少ない人の両面の災害対策が必要であることが指摘された。 第三に日本建築学会大会において公共文化施設のBCP調査研究の中間報告的な位置づけとして発表を行った。具体的にはアンケート調査をまた2016年の熊本地震における公共文化施設の被害状況とその後復旧状況などのケーススタディを行うことで、東日本大震災以降の公共文化施設の災害対策の現状と課題の整理を行った。更には海外事例との関連において、韓国を調査対象国として公共文化施設計画への災害対策の現状と課題などを、韓国の研究者との共同調査等により調査項目の整理を行い次回の調査計画の立案と最終的に海外との共通理解におけるBCPの策定項目の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査により、劇場・ホールを中心とした公立文化施設における災害対策状況の実態の把握が大きく進展した。特にこれまで具体的な状況が把握できていなかったハード・ソフト両面の災害対策の計画策定及び避難訓練などの実際の運用状況について、ある程度明らかになった。また東日本大震災を契機とした災害対策の検討状況についても、災害対策における被害想定の内容、災害対策における議論の開始時期、計画の具体化、地域及び関係団体(機関)とのネットワークの形成などの検討・策定のプロセスについてもその一端が明らかになりつつある。更には、実際の公立文化施設の基本設計・実施設計におけるプロセスとの連携、東日本大震災における復興WSなどにおいて、東日本大震災における復興まちづくりのプロセスなども複数の対象施設に対して、計画の具体化の場面に様々な情報共有などを行い、単なる理念の構築とその運用上の課題の整理も進展し、実践性の高い公立文化施設におけるBCP策定状況を把握しつつある。これらは研究開始時(平成27年度)においては実態の状況がほぼ概要のみに終始していた点を考慮すると概ね順調に進展しているといえる。 また研究開始当初は、検討レベルであった海外における公共文化施設における災害対策の検討・作成についても、韓国を対象地域とし公立文化施設及び有識者などへの事例及びヒアリング調査などを行ったことで、公立文化施設の計画策定の内容と運用の海外展開に向けた議論に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に該当する本年度については、主に3つの内容を行う予定である。第一に東日本大震災の被災地及び南海トラフ地震の発生が想定されている地域、東日本大震災の被災地域を対象に、実際の運用実態及び比較的BCPの検討及び策定に着手している公立文化施設への詳細な事例調査を予定している。第二に実際に策定されている災害対策の内容を有識者へのヒアリングなどを踏まえて、詳細に分析を行う。具体的には理念の構築と実際の実施計画との相違点、東日本大震災の地域においては、被害及び避難所設置・運用などを踏まえた被災経験が具体化する状況について整理を行い明らかにする。第三には全体の総括を行い公立文化施設におけるBCP検討・策定状況と策定を進めるための課題を明確にし、公立文化施設における実践的なBCP(事業継続計画)の検討プロセス及び内容案を提示するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終的な総括の段階において詳細なBCP計画の検討項目の調査検討のために、ヒアリング調査が必要になったこと。GISデータをベースとした詳細な分析、必要になったこと。各種データ総括における有識者などからのヒアリングを行うことがより研究の精度を高めることなどを判断し、調査旅費を中心に次年度使用額が生じた。
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