研究課題/領域番号 |
15K06429
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
海老原 健一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (40360416)
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研究分担者 |
鈴土 知明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主幹 (60414538)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粒界脆化 / 粒界偏析エネルギー / 拡散レートモデル / キネティックモンテカルロ / 第一原理計算 / 鉄リン格子間原子対 / 侵入型リン原子 |
研究実績の概要 |
構造材料における元素の粒界偏析エネルギーは粒界脆化機構を理解するうえで重要な物理量であるが、その値が実験による評価と第一原理計算による評価の間で大きく異なることが指摘されている。本研究では、その違いが実験による評価で粒界近傍の元素の分布を適切に考慮していないことに起因するとの考えから、第一原理計算に基づく拡散レートモデルを用い元素の粒界拡散偏析を評価し、その仮説を検証することを目指している。 鉄鋼における脆化元素であるリンのbcc鉄中での移動拡散について、第一原理計算で得られた鉄原子とリン原子の混合格子間原子対(MID)の状態遷移に関する障壁エネルギーを組み入れたキネティックモンテカルロシミュレーションコードを開発し、それによってMIDによるリンの拡散係数を評価した。さらに、鉄の自己格子間原子対(SID)により格子間サイトに追い出され侵入型となったリン原子の拡散係数についても対応する障壁エネルギーを用いて評価した。その結果、どちらの係数も空孔との相互作用に起因する拡散係数よりかなり大きな値となった。 上記の結果に基づき、置換型リン原子と侵入型リン原子を区別し、空孔やSIDとの相互作用によるそれぞれのリン原子の生成・消滅に基づく両者間の遷移を考慮し、これまで開発してきたリンの粒界拡散偏析コードを修正した。修正コードを用い従来の方法でリンの粒界偏析を計算したところ、置換型リン原子が侵入型リン原子に変わり粒界として設定した境界から計算領域外に出てしまうことにより、粒界リン偏析の適切な評価ができないことがわかった。このことを回避するにはリンの粒界によるトラップ・デトラップ過程の考慮が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄リンの格子間原子対の状態遷移に関するキネティックモンテカルロコードの開発及びそれによるリンの拡散係数の評価、侵入型リン原子の拡散係数の評価、それらの拡散レートモデルへの組み込みは、当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき、粒界偏析エネルギーを含むトラップ・デトラップ過程をモデルへ組み込むことを検討しモデルの修正を図る。修正モデルの妥当性を検討した後、リンの熱や照射による粒界偏析の計算を行う。その後、粒界偏析量、偏析エネルギー、及び粒界周辺のリン分布の関係を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
応募額に対して減額の形で交付内定を受けたため、応募時想定していた性能の計算機を購入できず、今年度は他の研究のための計算機を代用することとした。しかし、計算結果の解析やデータの保存に余裕がないため、当初の計算機購入費をデータ解析するための計算機及びデータ保存用ディスクなどの購入に変更した。また、同様の理由により、応募時の研究計画を一部、変更し、平成27年度に想定していた国内外の学会への参加を平成28年度に変更した。これにより次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
解析用計算機及びハードディスクの購入、国内及び国際会議等への参加のために使用予定
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