研究課題/領域番号 |
15K06450
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
坪内 信輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 先進パワーエレクトロニクス研究センター, 主任研究員 (10357535)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ワイドギャップ半導体 / キャリア捕獲準位 / 粒子線 / 光 / スペクトル |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に検討した装置の設計及び組み上げと測定原理の実現性の検証を行った。漏れ電流がナノAレベル以下であることを確認した上で、絶縁性の単結晶ダイヤモンドについて、正孔キャリアによる粒子線エネルギースペクトル測定を行った。その内のひとつについては、キャリア捕獲準位についての情報はあるが、スペクトルにおいて明瞭なシグナルを観察することが困難であった。一方、測定試料の中には、スペクトル中に比較的明瞭なシグナルが出現するものもあったが、捕獲準位についての詳細は不明である。シグナルが不明瞭である原因の推定を行うため、光透過スペクトルの測定を行った結果、シグナルが出る試料においては、バンド端近傍に欠陥起源の連続的準位が存在するのに加え、窒素起因の明瞭な吸収が見られないことが分かった。これは、シグナルの有無に窒素が関与することを示唆する。確定的な理解までには至らなかったが、キャリア緩和時間が非常に短いことにより、誘起されるチャージが非常に小さく、バックグラウンドに埋もれる可能性が推定された。後者については、白色光源と650nmのバンドパスフィルターと赤色レーザーダイオードを照射しながらスペクトル測定を行った結果、ピークが高エネルギー側にシフトすることが確認された。これは、これらの光照射によって捕獲準位から価電子帯に正孔が放出されたことにより、チャージが付加的に誘起されたためと解釈され、単一波長であるが本装置の原理の一部が検証されたことを意味する。また、装置の光学系部分については、照射すべき光強度、検出分解能、感度の観点で、光学パス機構の改良を継続して行う必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に検討した装置の設計と組み上げを実施したが、測定原理の実現性検証のために用いた試料において、指標とするシグナルが不明瞭であることが分かった。そこで、その原因の推定のための追加的実験と今後の対策の検討を行った。その一方、窒素含有の抑制が示唆される試料においては、650nmの単一波長での照射によるスペクトル測定で、照射によるシグナルの変位が確認され、本装置の動作の部分的検証がなされた。この結果を受けて、試料に対して照射すべき光強度、検出分解能、感度の観点で、光学系部分(光学パス)の機構について継続検討する必要があることが分かり、以上の点でやや遅れが生じているが、全体的な計画への影響はないと理解している。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、照射すべき光強度、検出分解能、感度の観点から、装置の光学パス部分の検討とその確定を急ぐとともに、必要なシグナルが得られることが見通せた試料について、光照射波長領域を拡大して本装置による測定原理の検証を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の報告概要でも記したが、類似の絶縁性の試料について測定の難しいケースがあることが分かってきた。そこで、光学系に関わる部分について最終仕様に向けた追加的な検討を行う必要がある。その一方で、比較的に測定しやすい試料について、本測定原理の検証に向けた実験を同時並行して行う必要があった。結果として、追加的検討に関わる予算使用遂行を見送った部分がある。
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次年度使用額の使用計画 |
光学系に関わる部分の追加的な検討、及び、同時並行して行う本測定原理の検証等に関して必要となる装置の変更に関わる必要物品類の確定と購入を実施する予定である。
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