ワイドギャップ半導体中を走るキャリアの捕獲をもたらす結晶不完全部の種類やエネルギー深さを知ることは、非常に重要である。これは、基礎物性の観点のみならず応用の観点から、従来材料を置き換えることで現状のデバイス適用可能範囲を押し上げたり、素子性能の大幅向上等の可能性が広がることによる。しかしながら、その大きなバンドギャップに起因する高絶縁性の材料においては、対応する捕獲エネルギー準位の位置も非常に深くなるため、狭ギャップの従来半導体で用いられてきた評価手法の適用が難しい。本研究では、離散的な粒子線を当該材料に入射させることによって過渡的なキャリア伝導を起こし、その運動を誘導電荷として検出することを測定原理とする。その際、関係するキャリアの捕獲準位深さを検出するために光を同時照射し、そのエネルギー準位に対応する光子エネルギーによる捕獲キャリアの解放によって生じるであろう誘導電荷量の回復への寄与をプローブとすることで、捕獲準位の評価を行うことを意図した。従来の定常的な外部電流取り出し等の方法とは異なった手法を取ることにより、本課題の解決を図ることを目指した。この原理を元にした装置を構築し、絶縁性ダイヤモンドのキャリア捕獲中心に関連するエネルギー準位の検出を試み、測定法の有効性を調査した。例として当該ダイヤモンド中を走行する電子と正孔それぞれのキャリアの捕獲準位分布の検出を行った結果、正孔の場合には400~1300nmの広い波長に対応するエネルギー深さの捕獲中心が連続的に存在することが示された。また、電子の場合には、掃引した波長領域において誘導電荷が未照射時よりも減少することが分かった。これらの結果と、光吸収等の他の測定手法による結果を参照データとして考慮することで、本手法の有効性を明らかにした。
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