研究課題
ドーパミンやアセチルコリン、ノルアドレナリンをはじめとする神経修飾因子作動性ニューロンは標的ニューロンに対してシナプスを形成するが、本研究ではそれらのシナプスに共通する分子形態基盤の確立を目指している。本年度は以下を明らかにした。①線条体アセチルコリンシナプスの構造的標的の同定先行研究にてアセチルコリンシナプスはシナプス接着分子ニューロリギン2を発現することが報告されている。まず本年度はこのニューロリギン2の分布特性を利用することによって、GFP発現レンチウイルスベクターを用いて標識された単一樹状突起上に形成されるアセチルコリンシナプスの分布を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する方法を確立した。次に、GFP標識された樹状突起の神経化学的特性を決定した上で、異なるニューロンの樹状突起上におけるアセチルコリンシナプスの密度を比較したところ、中型有棘ニューロンにて豊富な分布を示したドーパミンシナプスの場合と異なり、異なるニューロン間における明瞭な違いは認められなかった。②線条体アセチルコリンシナプスの機能的標的の同定線条体にて豊富な発現を示すアセチルコリン受容体のうち、ムスカリン性アセチルコリン受容体mAChRM4に着目した分布解析を中心に行った。mAChRM4は直接路中型有棘ニューロンとアセチルコリン作動性介在ニューロンに発現し、直接路中型有棘ニューロンではポストシナプス側となるスパイン、樹状突起、細胞体のシナプス外細胞膜上に広く分布していた。すなわち、mAChRM4はドーパミン受容体と同様にシナプスに集積する傾向を持たないことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は計画通り、線条体アセチルコリンシナプスの構造的および機能的標的の同定をほぼ終えることができた。しかし、当初の計画ではニコチン性アセチルコリン受容体nAChRb4の局在解析も終える予定であったが、解析用抗体の特異性についてノックダウンを用いたイムノブロットでの確認までしか終えておらず、組織レベルでの解析まで及んでいない。このことから、現時点での評価はおおむね順調に進展しているとした。
今年度はnAChRb4に対する局在解析を引き続き行うとともに、GABA作動性シナプス分子に着目した線条体アセチルコリンシナプスにおける分子発現解析を中心に行う予定である。
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