研究課題
本研究の目的は、聞こえの調節に必須の役割を担っている内耳外有毛細胞(OHC)に特異的に発現する遺伝子の機能解析を行うことにより、OHCの形成・維持機構および聴覚機能のメカニズムを明らかにすることである。ジフテリア毒素の投与により任意の時期にOHCを特異的に破壊することのできるOHC-TRECKマウスを用いて、マイクロアレイおよびRNA-seqによる内耳蝸牛における発現遺伝子の網羅的比較を行った結果、OHC破壊マウスの蝸牛で発現量が著しく減少する遺伝子として、Myo15、Strc、Pou4f3、Kcnq4、Slc26a5 (prestin)等難聴の原因遺伝子として同定されている遺伝子群に加えて、聴覚における機能の知られていないOcm、Chrna10、Ppp1r17、Slc6a11 (Gat3)を見出した。それらの遺伝子のOHC破壊マウスにおける発現減少はqRT-PCRによっても実証され、特異抗体を用いた組織免疫染色で、OCMはOHCの核および細胞質に、PPP1R17、CHRNA10およびGAT3は主にOHCのクチクラ板に発現していることが明らかとなった。発現減少が特に顕著であったOcmおよびPpp1r17については、CRISPR/Cas9システムによりKOマウスを樹立し、詳細な表現型解析を行った。Ocm-KOマウスは、i)早期に進行性難聴を発症する、ii)コルチ器の外トンネルが著しく狭小化する、iii)感覚毛の短毛化や脱落が認められる、iv)加齢に伴いOHCが減少することが判明し、OHCの形成や維持に重要な機能をもつことが強く示唆された。Ppp1r17-KOマウスでは、野生型マウスと比較して聴力閾値は上昇したが、形態の異常は認められなかった。本研究で見出したOHC特異的発現遺伝子の機能を解明することで、OHCにおける分子メカニズムが明らかになることが期待される。
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PLoS One
巻: 12 ページ: e0183477
10.1371/journal.pone.0183477
http://www.igakuken.or.jp/mammal/