研究課題/領域番号 |
15K06947
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸 雄介 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00645236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 |
研究実績の概要 |
神経幹細胞の増殖期からニューロン分化期への移行メカニズムについて、PcG関連遺伝子やとHMGA1, 2に着目して研究を行うことを目的としている。 本年度は、増殖期神経幹細胞においてPcG構成因子であるEzh2やRing1A, Bをノックアウトするために、Sox1-Creマウスを入手し、交配を行った。比較的複雑な交配となり時間を要することが予測されたが順調に交配が進み、すでにEzh2, Ring1A, Bのノックアウトを確認している。また、その他のPcG関連遺伝子であるJmjd3のノックアウトマウスも入手し、現在増殖期神経幹細胞においてノックアウトするためにSox1-Creマウスとの交配を行っている。 HMGA1, 2のノックアウト、過剰発現については、当初は遺伝子改変マウスを作成して解析する予定であった。しかし、増殖期である神経管閉鎖前、E8.0胚の羊水に試薬を導入する方法を確立した。これにより、羊水に接する神経幹細胞に薬理学的処理をすることや、ウィルスにより遺伝子導入することが可能となった。神経管閉鎖前の神経幹細胞に遺伝子導入する方法は、これまで誰も開発しておらず、本研究が世界初である。特に、大脳新皮質への遺伝子導入効率が70%と非常に高いことや、中枢神経系以外にも内胚葉系や神経冠細胞由来の細胞にも遺伝子導入されている可能性が示唆されており、非常に有用な手法である。現在、この新規手法を報告すべく利点を活かした実験を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
時間のかかるマウスの交配に関して、PcGノックアウトマウスをすでに解析できる段階まで交配が進み、すでにノックアウトの確認までできた。 また、世界初である神経管閉鎖前の神経幹細胞への遺伝子導入法を確立した。これにより、HMGA1, 2の過剰発現、ノックアウトの表現型を観察するスピードが格段に早くなった。
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今後の研究の推進方策 |
PcG関連遺伝子に関しては、すでに作製したEzh2, Ring1A, Bノックアウトマウスの表現型を観察する。また、Jmjd3ノックアウトマウスも作製でき次第表現型を観察する。 HMGA1, 2に関しては、自ら開発した遺伝子導入法を応用し、野生型マウスへの遺伝子導入により増殖期からニューロン分化期への移行における役割を明らかとすることを目指す。 これらの結果がまとまり次第、HMGA1, 2とPcG関連遺伝子の関係について、生化学的に解析することを始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、マウスの作製、維持にコストのかかるノックアウトマウスを作製し、その解析を行うことを目指していた。 しかし、本年度の結果によりノックアウトマウスを作製しなくても、我々が考案したin utero injectionを用いることで十分HMGAタンパク質群の神経幹細胞における機能を解析することができることがわかった。よって、本年度に用いる予算が減少し、その分次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、in utero injection法を利用して実際にHMGAタンパク質群の機能解析を行う。その過程で必要となる妊娠マウスや、免疫染色用の試薬類の購入費として本予算を使用する。また、機能解析が早く進めば遺伝子導入した細胞をFACSで回収し、RT-PCRやChIPなどでHMGAタンパク質群の作用機序を明らかにする実験も行う。
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