塩基類養分の貯蔵・供給源としての土壌微生物バイオマスに注目し,塩基類養分の土壌中のバイオマスによる保持量,バイオマスから交換性・水溶性イオンへの流れを把握し,土壌微生物バイオマスの機能を定量的に明らかにすることを目的とした。 29年度までの結果を受け,30年度は土壌微生物バイオマスに含まれるカリウムの代謝回転時間の測定のため,土壌にカリウムを添加せずに炭素・窒素・リン源を添加し,バイオマスカリウム,炭素および窒素の動態を調査した。添加後,土壌中のバイオマス炭素・窒素とともにバイオマスカリウムが増加し,その後徐々に減少することが確認された。その減少程度からバイオマスカリウムの代謝回転時間を試算すると102日となり,有機物等の添加により若干過大評価されていると考えられるものの,バイオマス炭素の代謝回転時間の試算値(181日)よりも短く,バイオマス中のカリウムが活発に回転していることが示唆された。さらに,ルビジウムをカリウムのトレーサーとして用いる新たな手法を検討した。バイオマスルビジウム定量のためのルビジウムの溶出率(kRb)を求め,土壌微生物バイオマスルビジウムの定量法を確立した。その上で,炭素・窒素・リン源とルビジウムの土壌への添加により,ルビジウムのバイオマスへの取り込みを確認した。 研究期間を通して,水田,畑,草地,樹園地など各種土壌におけるバイオマスカリウムの存在量や動態を明らかにするとともに,バイオマスカリウムの代謝回転時間を初めて算出し,カリウムの貯蔵・供給源としての土壌微生物バイオマスの重要性を示した。 カルシウムとマグネシウムについては再計算により溶出率の算出が困難な場合があったため,今後さらなる検討が必要である。また,バイオマスカリウムの代謝回転時間およびルビジウムをトレーサーとして用いた場合の代謝回転時間の測定についても,今後データの集積が必要である。
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