エロモナス属菌のうち、Aeromonas hydrophilaの病原性発現における鉄獲得機構の寄与について明らかにすることを目的とする。さらに、魚病発現におけるシデロフォア(三価鉄輸送キレーター)産生やヘム鉄利用系の関与と鉄制御外膜タンパク質の魚病ワクチンとしての可能性について基礎的な評価を行い、鉄獲得機構が魚病を予防するためのターゲットの1つとなりうることを明らかにする。 当該年度ではAeromonas hydrophila における鉄制御外膜タンパク質の魚病ワクチンとしての可能性について基礎的な評価を行うために、金魚(Carassius auratus)を用いて投与実験を行った。鉄豊富条件もしくは鉄制限条件下で培養した菌体をホルマリン処理して調製した抗原を金魚に投与し、その後、感染実験を行った。鉄制限条件下で培養した菌体のホルマリン処理の方が鉄豊富条件下で培養した菌体のホルマリン処理よりも生存率の上昇傾向が認められた。さらに、本菌の鉄制御外膜受容体をヒスチジンタグタンパク質として大量発現、精製したものを抗原として金魚に投与し、その後、本菌の感染実験を行った。鉄制御外膜受容体タンパク質を抗原として投与した金魚は非投与群と比較して生存率の上昇傾向が認められた。今後は、他の鉄制御外膜受容体タンパク質の投与や投与金魚数を増やして、鉄制御外膜タンパク質の魚病ワクチンとしての効果について詳細な評価を行う。
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