研究課題/領域番号 |
15K07592
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研究機関 | 東海大学短期大学部 |
研究代表者 |
本間 智寛 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90435272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イソギンチャク / ペプチド毒 / イオンチャネル / Biacore / サワガニ |
研究実績の概要 |
1. 新規ペプチド毒探索の新しいアッセイ系として「Biacoreを用いたチャネル結合アッセイ」の条件検討を行った。まず、既知のイソギンチャクのNaチャネル毒Toxin IIをリガンドとしてBiacoreのチップに固定し、ラット脳から調製したシナプトソーム溶液をアナライトとしてフローした。その結果、リガンドを結合していないブランクと比較して、シナプトソーム添加時に得られたセンサーグラムは、有意な結合パターンを示し、再現性も確認された。そこで、シナプトソームに対して結合能を有さないコントロールとして、分子量が同程度であるウシ膵臓由来トリプシンインヒビターBPTIをチップに固定して同様の測定を行ったところ、Toxin IIと比較して1/3程度の結合が観察された。この結合は非特異的結合とみられるので、現在、シナプトソーム調製法の改良等を試み、非特異的結合の低減を図っている。 2. ヒトを刺すことで知られる有害なイソギンチャクは数多いが、その毒成分が調べられたものは数少ない。そこでそれらの内、毒成分が未解明のカザリイソギンチャク、ハナブサイソギンチャク、ヒメフトウデイソギンチャクに注目して、サワガニを指標とした毒成分の単離を試みた。その結果、前者2種では、粗抽出液において毒性を示さなかったが、ヒメフトウデイソギンチャクでは比較的強い毒性を示し、ゲルろ過、逆相HPLCによる単離を試みた結果、数成分のペプチド毒の単離に成功した。現在その構造解析を進めている。 3. 以前にジュズダマイソギンチャクからは4成分のペプチド毒を単離し、そのうち3成分は一次構造的に新規なペプチド毒であったが、その生化学的性状について、いくつか調べ切れていない点があった。そこで、それらの性状解明を行い、ジュズダマイソギンチャク由来の新規ペプチド毒に関するデータを取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Biacoreによる新しいアッセイ系の確立は条件検討の段階にあり、次年度以降の継続課題となったが、従来のサワガニ毒性試験法によって、数成分のペプチド毒の単離に成功したことから、進捗状況は予測の範囲内にあり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. Biacoreを用いたチャネル結合アッセイ系の確立および各種イソギンチャク粗抽出液に対するスクリーニング シナプトソーム調製法の改良等の検討を行い、非特異的結合に対する課題を解決し、早期にアッセイ系を確立する。確立後、そのアッセイ系の特徴を活かしたスクリーニングを行う。スクリーニングは、すでに手元にある 30 種程度のイソギンチャクから調製した粗抽出液を対象に行い、確立したアッセイ系の有効性を確認する。 2. 新しいアッセイ系と従来のサワガニアッセイ系による新規ペプチド毒の探索と構造決定 スクリーニングによって活性の認められたイソギンチャクについては、新しいアッセイ系による活性を指標にして、ゲルろ過、逆相HPLC、イオン交換HPLC などにより、ペプチド毒を単離し構造決定する。また昨年度同様に本年度も、従来通りのサワガニに対する毒性を指標としたペプチド毒の探索を並行して行っていく。 3. これまでに単離した新規ペプチド毒の詳細な作用機構の解明 代表者がこれまでにサワガニに対する毒性を指標に単離してきた新規ペプチド毒は20成分近くあるが、これらは一次構造的に全くの新規であることから、その作用機構はほとんどが未解明のままである。そこで、これらの毒が作用する可能性が高い各種イオンチャネル(Kv1.2, Kv3.4, hERGなど)をアフリカツメガエルの卵母細胞で発現させ、新規ペプチド毒による機能阻害や機能修飾を2本刺し膜電位固定法で解析し、有効利用に向けた詳細な作用機構の解明を行う。
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