研究実績の概要 |
1. 研究代表者によって、これまでに単離にされた新規ペプチド毒(イボハタゴイソギンチャク由来のSHTX I, II,ジュズダマイソギンチャク由来のHa III,ヒメニチリンイソギンチャク由来のPl II,Cribrinopsis sp.由来のJiibo V,Metridium sp.由来のMetridin様ペプチド)の6成分を精製し,アフリカツメガエルの卵母細胞に各種イオンチャネル(Kv1.2, Kv3.4, hERG, GIRK1/2)を発現させ,新規ペプチド毒による機能阻害や機能修飾を2本刺し膜電位固定法で解析した。その結果,イボハタゴイソギンチャク由来のSHTX I, IIの2成分に,Kv1.2チャネルに対する機能阻害が認められた。 2. これまでに新規ペプチド毒探索の対象とされていなかったイソギンチャク類の近縁種とサンゴ類(ソフトコーラル)に対して、活性のスクリーニングを行った。具体的には、イトイソギンチャクモドキ、オオウミキノコ、ツツウミヅタ、ヤワタコアシカタトサカの4種に対して行ったところ、4種すべてでサワガニに毒性を示したが、なかでもイトイソギンチャクモドキとツツウミヅタの2種はサワガニに強い毒性を示した。そこで、イトイソギンチャクモドキについては、ゲルろ過、逆相HPLCによる毒成分の精製を試みたが、ゲルろ過後の活性画分は凍結操作によって失活してしまい、精製には至らなかった。従来のイソギンチャク毒では凍結による失活は稀で、本毒成分はこれまでの毒とは異なる性状を有することが期待されることから、現在、その精製を試みている。 3. 以前にヒメニチリンイソギンチャクから単離した5成分のペプチド毒(Pl I-V)については、内4成分は構造的に新規なペプチド毒であったが、一次構造の決定には至っていないなかった。そこでcDNAクローニングを行い、その全アミノ酸配列を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
1. Biacoreを用いたチャネル結合アッセイ系の確立 引き続きシナプトソーム調製法の改良を続け、非特異的結合に対する課題を解決し、ポジティブコントロールを用いての本アッセイ系の有効性を確認し、実用化を図る。 2. 従来のサワガニアッセイ系による新規ペプチド毒の探索と構造決定 これまでに新規ペプチド毒の探索対象とされてこなかったイソギンチャク類の近縁種とサンゴ類を中心に、従来のサワガニアッセイ法によって新規ペプチド毒の探索を試みる。またゲルろ過、逆相HPLC、イオン交換HPLCなどにより、新規ペプチド毒の単離に成功した場合の構造解析は、プロテインシークエンサーおよびcDNAクローニングによって行う。cDNAクローニングは、既知アミノ酸配列をもとにRACE法で行い、cDNAおよび前駆体タンパク質の構造上の特徴を明らかにする。 3. これまでに単離した新規ペプチド毒の詳細な作用機構の解明 昨年度に引き続き、代表者がこれまでに単離した新規ペプチド毒について、これらの毒が作用する可能性が高い各種イオンチャネル(Kv1.2, Kv3.4, hERG, GIRK1/2など)をアフリカツメガエルの卵母細胞で発現させ、その機能阻害や機能修飾を2本刺し膜電位固定法あるいはパッチクランプ法で解析し、有効利用に向けた詳細な作用機構の解明を行う。
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