研究課題
基盤研究(C)
本研究の成果は以下の3点である。1)初期の土壌含水量によって、土壌から田面水へのリン溶出量が異なり、また田面水中の植物プランクトンの増殖に違いが生じた。2)田面水中の水流が、大気―田面水間のガス交換を促進し、藻類の増殖に正の影響をおよぼした。3)巻貝の濾過摂食による緑藻類からの無機態リンの回帰率は、約0.2と低かった。また、巻貝による土壌表面の付着藻類の摂食は無機態リンの回帰を促進し、リン回帰量は巻貝の種類によって違いが生じた。
農地環境学
水田に存在する生物を利用することで、水田土壌から田面水へのリン溶出量は増加することが示された。本研究成果は、低コストで水田からのリンを回収する技術の開発に寄与するものと思われる。水田は人工の湿地とみなすことができる。湿地には多くの環境保全機能があり注目されている。本研究で得られた知見は、リンの回収のみならず、藻類による炭素固定など、水田の環境保全機能の強化にも応用可能であり、水田の多面的な利用につながるものと期待される。