研究課題/領域番号 |
15K07856
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
纐纈 守 岐阜大学, 工学部, 教授 (50178208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸 / セレニウム / セレン導入試薬 / 保護基 |
研究実績の概要 |
DNA及びRNAは生体物質であり、その構造及び生体内反応のメカニズムを知ることは新たな治療法の開発に重要である。DNA及びRNAの構造を知るうえでMAD法と呼ばれるX線構造解析が非常に有効な手段として知られており、2'位の水酸基をセレノメチルで置換した2'-セレノメチル体はMAD法に有用な化合物である。また、2'位水酸基をマスクすることでRNAヌクレアーゼ耐性を付与することができる。そこで本研究で2'-セレノウリジン誘導体の合成を検討した。 平成28年度は、シクロウリジンを出発原料とし、5'位水酸基をDMT保護した後、TSE(トリメチルシリルエチル) セレン導入試薬を用いることで2'位にTSEセレンを導入した。その後、イミド基をBOM保護し、最後にTBAF存在下、ヨードメタンと反応させることで目的生成物である2'-セレノメチルウリジンを合成した。 2'位へのセレノアルキル基の導入法の確立により、各種求電子剤と反応させ反応の有用性を確認した。 アミダイトモノマーを用いてRNAオリゴマー合成することができる。2'-TSEセレノウリジンをアミダイトモノマー合成へ応用することとした。2'-TSEセレノウリジンのイミド基をPOM保護し、TBAF存在下、ヨードメタンと反応させることでN-POM-2'-セレノメチルウリジンを合成した。その後DMAP存在下、2-Cyanoethyl diisopropylchlorophosphoraiditeと反応させ、最終目的化合物を得た。 これらの成果は、学術誌(Synlett, 28, 831-834 (2017).)にて審査後、採択され掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度、核酸分子の糖部の5’位の酸素原子をセレン原子に置換した核酸の合成法を確立した。本年平成28年度は、さらに各種セレン修飾核酸の効率的合成法を開発するため糖部の2'位にTSEセレンを導入し、その後、イミド基をBOM保護し、最後にTBAF存在下、ヨードメタンと反応させることで目的生成物である2'-セレノメチルウリジンを合成する方法を開発した。この手法により各種求電子剤と反応させることで反応の有用性を確認し様々な置換基を糖部の2'位に導入することが可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
我々はトリメチルシリルエチル基 (TSE基) をセレン原子の保護基として用い、フッ化テトラブチルアンモニウム (TBAF) によって活性化させることでセレノラートアニオンを発生させ、このセレノラートアニオンと求電子剤とのSN2反応によって効果的にセレン導入が行える方法を見出している。この手法を活用し平成27年度、28年度各種セレン修飾核酸の効率的合成法を開発してきた。これらの成果を基に平成29年度はこの手法を核酸同様に重要な生体成分であるアミノ酸合成に活用することで様々なセレノシステイン誘導体、セレノシステイン誘導体含有ペプチド、セレノグルタチオン誘導体の合成及び効率的な合成法を確立し、セレノグルタチオン誘導体の効率的な合成法を確立することを目指す。
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